日経サイエンス  2000年3月号

特集:気球新時代

火星の空を旅する

I. S. スミス(NASAゴダード宇宙飛行センター) J. A. カッツ(ジェット推進研究所)

 気球は地球や惑星の大気上層部を研究する手段として,低コストですぐに結果が出る点が注目され,21世紀にはますます有力な方法になる。

 

 現在,研究者は地球大気の最上層部に関心をもっており,100日間も滞空できる気球を計画している。2001年の12月に,メリーランド州にある米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターで開発されている,巨大なカボチャ形気球を,オーストラリアかニュージーランドのどこかから打ち上げ,地球大気の外縁部(旅客機の飛ぶ高度の4倍高いところ)に浮かべ,数カ月間滞空させようとしている。

 

 超長時間飛翔気球(ULDB)プロジェクトは,気球技術を上層大気や宇宙空間を研究する低コストの手段とみている多くの科学者が期待している。気球はロケットに比べごくわずかな費用で飛ばせるし,搭載装置を回収し,調整後,再び飛ばせる。科学観測用気球は,これまでに最高で高度52kmまで達したことがあり,搭載容量3600kgのペイロードを上げたことがある。大気の影響がほとんどなくなる成層圏の限界まで到達できるので,ULDBは将来,ハッブル宇宙望遠鏡と張り合うような,強力な望遠鏡を運ぶことになろう。ロケットで気球を地球の大気圏外に運べば,他の惑星やその衛星の大気を科学的に調査できる。

著者

I. Steve Smith,Jr. / James A. Cutts

2人は共同で地球外での気球技術に数年間携わっている。スミスはNASAゴダード宇宙飛行センターのULDBプロジェクトマネジャー。テキサスA&M大学で宇宙航空学を学び,四半世紀にわたって気球の設計概念を研究している。カッツはケンブリッジ大学とカルフォルニア工科大学で,物理学,地球物理学,惑星科学を学んだ。彼は後に,マリナー6号,7号,9号,バイキング火星周回ミッションに加わった。最近まで,カルフォルニア州パサデナにあるジェット推進研究所の特別プロジェクト局のマネジャーだった。現在は火星探査局に所属している。

原題名

Floating in Space(SCIENTIFIC AMERICAN November 1999)

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