日経サイエンス  2000年3月号

特集:気球新時代

超長時間の滞空を目指す

矢島信之(宇宙科学研究所)

 気球の補強ロープを布地に縫いつける際,しわを寄せてつくることによって,強度の強い気球ができるようになった。日本の設計による本格的カボチャ形スーパープレッシャー気球が世界で初めて完成,飛行した。

 

 ごく軽いペイロードを載せた球形気球を除き,大型のゼロプレッシャー気球に取って代われる本格的スーパープレッシャー気球は,控えめな目標すら達成できていない。米航空宇宙局(NASA)が計画しているような巨大なスーパープレッシャー気球を一挙に実現するには,これまでとは異なる何らかの飛躍的革新がなければ不可能だ。NASAの超長時間滞空気球(ULDB)計画の成否は,正に気球の成否にあると言っても過言ではない。

 

 宇宙科学研究所の気球工学部門にとっても,スーパープレッシャー気球は重要な研究課題だ。ただし,多くの研究者が,最新のハイテク技術を採り入れて強い皮膜を開発すれば実現可能との立場であるのに対し,宇宙研は気球の形状設計理論の再検討がより重要な課題だ,との立場からこの問題に取り組んできた。その研究は,これまでの気球の形状設計の概念の基本的欠陥を埋めるものとなり,そのことによって,圧力に強い気球の可能性もまた理論的に基礎づけられた。しかも,偶然のタイミングも重なり,その成果はNASAのULDBプロジェクトにも大きく反映されている。宇宙研矢島研究室の研究が,大型のスーパープレッシャー気球に道を開いた。

著者

矢島信之(やじま・のぶゆき)

宇宙科学研究所システム研究系気球工学部門教授,工学博士。科学観測用気球技術全般を扱っている。特に最近の興味は,ここ半世紀の気球形状設計法の全面的再検討と次世紀の科学気球のあり方だ。