日経サイエンス  2000年3月号

逆回しの音響学

M. フィンク(フランス波動・音響研究所)

 手に握った豆をばらまくシーンをビデオで撮影し,逆戻しで再生すると,散った豆が手に吸い寄せられるように集まってくる。これと同じように1カ所から出た音を周囲に置いた数多くのマイクで拾ってテープレコーダーで録音し,それを逆回しの信号に変えてそれぞれのマイクの位置から今度はスピーカーで流すと,その音が音源に吸い寄せられるように集まっていく。

 

 こんな時間をさかのぼるかのような音は,腎臓結石の破砕や脳腫瘍の温熱療法,物質内部にある欠陥の非破壊検査,さらには潜水艦の通信など幅広い応用があり,新たな音響技術として注目を集めている。

著者

Mathias Fink

音響時間反転鏡をパリ市物理化学工業高等学院で開発した。フィンクは波動・音響研究所の主任で,デニ・ディドロ大学(パリ第7大学)の物理学教授。固体物理のPh.D.を取得し,パリ大学から超音波医療画像の分野でも博士号を得た。フランス大学協会の会員でもある。

原題名

Time- Reversed Acoustics(SCIENTIFIC AMERICAN November 1999)