日経サイエンス  2000年2月号

甦った王妃ネフェルタリ

N.アグニュー 前川信(ゲティ保存研究所・ロサンゼルス)

 紀元前1290年から1224年までエジプトを支配したラムセス2世に寵愛されたネフェルタリ王妃について,わかっていることはほとんどない。だが,ネフェルタリの墓の壁画は,ファラオの墓葬芸術の中でとりわけ美しい。

 

 しかし,近年は壁画の劣化が進み,一般の公開も取りやめられていた。ゲティ保存研究所とエジプト考古局は,ハイテク機器や技術を駆使し,これ以上壁画が壊れないようにするとともに,修復の手は入れずにできるだけオリジナルな姿を観光客が見られるようにした。

 

 

再録:別冊日経サイエンス210「古代文明の輝き」

著者

Neville Agnew / 前川信(まえかわ・しん)

アグニューと前川信はロサンゼルスのゲティ保存研究所(GCI)に所属し,世界各地で考古学的プロジェクトを共同で行っている。アグニューは化学で博士号を取得し,現在はGCIの情報コミュニケーション部門の長である。前川は,東京都出身。高校卒業後,1971年に米国に渡り,カリフォルニア大学サンディエゴ校で応用工学を学び,同大学ロサンゼルス校で流体力学で修士号を取得。その後,流体力学センター(後にハネウェル社に合併された)の研究員を経て,GCIに来て11年になる。環境モニターと微小環境のコントロールを専門とし,現在は,環境科学研究室長。また,前川はファラオの時代のミイラ用にカイロのエジプト博物館で用いられている,無酸素展示ケースの開発も行った。日本との関係でも,文化財保存関連の研究期間との共同プロジェクトを実施している。

原題名

Preserving Nefertari's Legacy(SCIENTIFIC AMERICAN October 1999)