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◆優秀賞[日経サイエンス賞]◆
1995年兵庫県南部地震の強震動シミュレーションと波動場の可視化
古村孝志(ふるむら・たかし)
  東京大学 地震研究所 地震火山災害部門 助教授
纐纈一起(こうけつ・かずき)
  東京大学 地震研究所 地震火山災害部門 助教授
図1   数値計算で再現された神戸市街地とその周辺の強震動(上:地震発生から7.6秒後,下:10秒後の地震波動場)。
図2   計算で再現された震災の帯。色は揺れの大きさ(水平地動速度の最大値)を表す。
 1995年兵庫県南部地震では,都市直下の地震の驚異が再認識されるとともに,さらに地震被害が断層から離れた狭い帯状の範囲に集中(震災の帯)するという,地震防災上の新たな問題も提起された。
 神戸−阪神地域の地下構造を見ると,六甲山から大阪湾にかけて基盤岩が急激に深くなっており,この上を軟弱な堆積層が厚く覆っている。したがって,「震災の帯」の生成には,この盆地構造と地震断層の位置関係が大きく関わっていると考えられる。
 そこで兵庫県南部地震の強震動の生成メカニズムを明かにするために,神戸周辺の詳細な地下構造と地震断層モデルを組み込んだ,3次元強震動シミュレーションを行った。神戸市街地とその周辺の領域を100mの間隔で約1600万格子に分割し,地震発生から25秒間の波動伝播を擬似スペクトル法を用いて評価した。なお,本計算には1.8GBのメモリを要し,3台のワークステーションを結合した並列処理は80時間で完了した。
 求められた地震波動場は,半透明ボリューム・レンダリング法を用いて可視化した。ここでは地震波エネルギーの対数強度とその空間勾配に応じて不透明度を与えた。これにより,大きな波動エネルギーを持つ実体波は強調され,散乱波や回折波のような擾乱現象は淡く表現されるため,複雑な3次元波動場の全体をよく眺めることができる。さらに地表の揺れを協調するために,計算から求められた地動速度を図上に鳥瞰図表示した(図1)。
 兵庫県南部地震の波動場の可視化とその動画処理により,1)神戸の地下の断層の二箇所から強く放射された地震波エネルギーが2つのパルス波を形成し(図中に(1)(2)で表示),これが2)神戸市街地の軟弱な表層地盤で強く増幅され,さらに3)六甲山/盆地境界で生じた回折波との増幅干渉によって強化されるという,一連の物理過程をよく理解することができる。このようにして再現された強震動分布(図2)は,神戸市街地に現れた「震災の帯」の広がりをよく説明する。
審査講評
1995年に発生した兵庫県南部地震をケーススタディとして,地盤構造がもたらす地震波動の増幅現象を3次元的に見事に視覚解析している。地震の巣の各スポットの地盤構造が予め得られれば,防災アセスメントのための画期的なツールとなることが考えられ,関連行政に与えるインパクトは最大限に評価されるべきである。