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◆入選◆
神経細胞の立体形状を考慮した神経興奮現象のシミュレーションと可視化
下川和郎(しもかわ・かずろう)
電子技術総合研究所 知能情報部 ビジュアルコンピューティングラボ大学院生
村木茂(むらき・しげる)
電子技術総合研究所 知能情報部 ビジュアルコンピューティングラボラボリーダー
図1  並列計算のためのデータ分割  
 
図2  神経興奮の伝播  
 
 生物の神経回路網による情報処理メカニズムを解明するため,我々は大規模な神経回路網の活動を細胞膜レベルから正確に再現する並列ビジュアルシミュレーション研究手法の開発を進めている。
 本システムは,8ノードのPCクラスタでボリュームデータを空間的に分割し,1個の神経細胞の興奮伝播の計算とボリュームレンダリングを並列に行っている(図1)。
 神経興奮伝播を記述する方程式には,近傍演算による局所並列演算に拡張したものを用いているため,局所的データを各ノード計算機に個別に持たせたままボリュームレンダリングと興奮シミュレーションを同時進行させることができる。このため安価なPCクラスタシテムの計算機を用いて,きわめて効率よく計算することができるという特徴を持ち,さらに大規模なシミュレーションが必要な場合でも,本稿と同様の階層化,並列化によって対応することができる。
 またここで用いたモデル計算の方法は,共焦点顕微鏡などによる実際の細胞のボリュームデータを,簡単な処理を行うことによってシミュレーションに利用できるという特徴を持つ。
 このため,様々な試料を用いて細胞の形態に依存して起こる興奮伝播の時間的遅延の様子などを視覚的に示す研究に有効であると考えられる(図2)。これらの技術を拡張することにより,神経細胞に空間的に作用するニューロモジュレータと呼ばれる化学物質の働きや,大規模な神経回路網の振る舞いについて,インタラクティブ性を損なわずにシミュレーションを行うことができると考えられる。