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◆特別賞[ニューフロンティア賞]◆
群集交差流動に見られる集団化現象の可視化
佐野友紀(さの・とものり)
  名古屋市立大学 芸術工学部 助手
高柳英明(たかやなぎ・ひであき)
  早稲田大学大学院 理工学研究科 建設工学専攻
図1   歩行小集団の生成
図2   歩行小集団の単独切断
1.はじめに
 鉄道ターミナル駅における群集制御の観点では,動線を交差しないように空間配置をすることが鉄則である。しかし,広がりのある空間においては,異なる方向へ進む群集がお互いにうまくすり抜ける状況が観察され,ある密度以下であれば群集流の交差を処理できることを示唆している。
2.目的と方法
 本研究では,二つの群集流動が交差する地点で歩行者が集団化して交互に通過する現象を,歩行領域の可視化を通して解析する。集団化が起こり個人の歩行領域が重なり合い,かつ融合する様子は,歩行者位置に電荷を与えた際の電界強度分布と近似している。現在のComputer Graphics分野においてはBezier Clipping法を用いたBlobs(和名:meta-ball)を用いた可視化がもっとも適しており,この技術を用いて群集の集団化の表現を試みた。歩行時に確保する歩行領域を歩行者の重心位置座標から一定距離をとる円柱で表した。
 可視化に用いる歩行者位置データは,駅コンコースにおける群集流動を撮影したVTR画像を1秒間隔でPCに取り込み,各画面上に映し出された全ての歩行者について,位置座標を抽出し,写像変換によって求めた。
 モデルでは,各歩行者の位置座標から歩行領域を計算する。歩行者及び集団のもつ領域を透明な液状体として表す。VTR画面の上から下に向かう群集流動がもつ歩行領域を青色,右下から左上を赤色で表現している。また,歩行領域が重なる部分は,その中間色で表現する。
3.結果とまとめ
 本研究では,二つの群集流動が交差する地点での歩行者の確保領域を可視化することにより,以下の現象を見いだした。
1)同一方向へ進む歩行者が集団化して「歩行集団」となり一つの領域を作ることで横断の負担を軽減すること
2)他方向へ進む歩行者が「歩行集団」内部を横断するすることは困難であり「歩行集団」の周りに沿って回り込むこと
3)他方向へ進む「歩行集団」の領域の重なりは,歩行の干渉を表し,その重なりが多い場合には交差が困難であること
 本研究では,可視化を通して歩行者の個々の領域が融合して歩行集団を形成すること,歩行集団の挙動特性を明らかにした。また,このように作成された可視化モデルは3次元オブジェクトであるため,画面上で回転・時間を移動しながら閲覧することも可能である。
審査講評
群集交差流動という社会学的側面をもった人間科学の新しい可視化トピックに挑んでいる点が主たる受賞理由である。個々の人間の身体的特徴差,集団固有の強度分布等をよりきめ細かく考慮し,信頼性の増したシミュレーション手法を,施設の改良や新規設計の妥当性評価等への適用に結び付けていかれることを強く望む。