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◆優秀賞[KGT賞]◆
カプセル背後の流れ構造把握のための可視化
寺本 進(てらもと・すすむ)
  文部省宇宙科学研究所高速流体力学部門助手
藤井孝藏(ふじい・こうぞう)
  文部省宇宙科学研究所高速流体力学部門教授
 
図1  生データの可視化
図1  
図2  フィルタ処理した可視化
図2  
 今日,コンピューターを使った数値シミュレーションと結果を視覚的に表示する可視化技術は,流体現象を研究するツールとして欠かせいないものになっている。計算機や計算法の進歩のおかげで,複雑な方程式や多数の格子点が扱えるようになり,今ではかなり複雑な流れでもコンピューター上に再現することができる。
 シミュレーションが複雑になれば扱う情報量も膨れ上がるので,より多くの情報を一度に表示できるように可視化技術も発達してきた。少なくともこれまでのところは,可視化を工夫することで多くの情報を表示すれば,シミュレーション結果を直感的に理解することができるようになり,流れの把握も容易になっていた。
 しかし,最先端の計算機をフルに使うような複雑なシミュレーションになると,いくら工夫しても可視化だけでは流れが把握できないようになってきた。図 1は再突入カプセル背後の圧力と後流を可視化したものだが,このシミュレーション結果は全体で14GBもある。筆者の一人が1986年に行った,当時としては大規模なシミュレーションの約1000倍である。このように大量のデータを一度に表示するのは極めて難しいし,仮にできたとしても今度は情報が多すぎて見る人間側が理解し切れなくなってしまう恐れがある。
 そこで我々は,流れが周期的に変動することに着目して,まず変動の振動数を調べ,帯域通過フィルターを用いてシミュレーション結果を処理することで情報量を絞り込む方法を試みた。フィルターを通すことで,着目する振動数以外の変動を除去できるので,変動が単純化され,流れを把握しやすくなる。実は周波数フィルターを用いてデータを処理する手法は実験結果のデータ処理では普通に行われているのだが,数値シミュレーションの後処理では結果を直接可視化する手法が主流で,結果を何らかの形で処理してから可視化する,という方法は余り使われてこなかった。
 図 1で示したシミュレーション結果をフィルタ処理した結果を図 2 に示す。着目する振動数で変動している領域が強調されている。動画で観察すると,生データの可視化( 図 1 )では圧力と後流が無秩序に変動しているようにしか見えないが,フィルタ処理( 図 2 )すると,背圧とカプセル背後の流れ場が互いに影響し合いながら変動していることが分かる。
 今後シミュレーションが大規模になるにつれ,計算結果を処理して情報量を絞り込んでから可視化することがますます重要になってくると考えられる。
審査講評
作品自身のレベルの高さはいうまでもないが,ターゲットとする現象を理解するためには,必ずしも得られた数値データのすべてを利用するのではなく,場合に応じて潔くフィルタリングする前処理が,より情報密度の高い可視化結果を得るという「黄金律」の価値を実証した点が特筆される。