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◆優秀賞[JIP賞]◆
ボリュームモデリングによる色えんぴつ画の表現
高木佐恵子(たかぎ・さえこ)
  東京工業大学情報理工学研究科
計算工学専攻博士課程2年
藤代一成(ふじしろ・いっせい)
  お茶の水女子大学理学部情報科学科教授
中嶋正之(なかじま・まさゆき)
  東京工業大学情報理工学研究科
計算工学専攻教授
図1    
a
(a)画用紙
b
(b)色えんぴつ画
c
(c)茶色い画用紙の色えんぴつ画
図2    
a
(a)色えんぴつ画
b
(b)加水効果適用後
c
(c)消しゴム効果適用後
 コンピューターグラフィックスの重要な研究テーマの一つに,ノンフォトリアリスティックレンダリングがある。我々は,その対象の中でも色えんぴつ画に注目している。色えんぴつ画で多用される画用紙には,肉眼でも認識可能な地合い(表層の質感, texture)が存在し,その細かな凹凸を反映した描画モデルを構築しない限り,色えんぴつ画らしさは得られない。そこで我々は,画材の相互作用を考慮した,色えんぴつ画のボリュームモデルを提案した。
 モデル全体は,データ型がボリュームで統一されている3つのサブモデル,すなわち,紙の 3 次元微細構造モデル,顔料分配モデル,顔料再分配モデルから構成される。紙の 3 次元微細構造は,紙の地合いに影響を及ぼすと考えられるパルプ繊維や填料を基本立体として表現し,それを多数配置して幾何学的にモデリングする。そして,作成した紙の幾何データをボクセル化して得られる,微細構造をもつ紙ボリュームへ顔料を(再)分配する。
 色えんぴつ画の調査から,繊維と色えんぴつ芯との摩擦から紙へ顔料が付着することや,填料や顔料で覆われている領域へは顔料が付着しやすいことが判明した。よって,顔料分配モデルでは,それぞれのタイプを個別にモデリングした。
 顔料再分配モデルは,加水効果と消しゴム効果に対応している。加水は,水溶性色えんぴつ画利用時に,湿らせた筆で描画面をなぞる手法である。溶け出す可能性のある顔料ボクセルを決定し,顔料の移動は,独自に拡張した 3次元の line integral convolutionを用いて計算する。消しゴム効果では, 薄く顔料を残すことによる柔かな雰囲気の表現を追求した。
 モデリングの各段階で得られたボリュームデータを,既存のレンダラVolVis*のボリュメトリックレイトレーシング機能により可視化した。紙ボリューム〔図1(a)〕に対して顔料分配モデルを適用してできた色えんぴつ画〔図 1(b)〕では,紙の微細構造を反映し,やわらかな風合いが再現されている。図1(c)では,図1(b)と同じボリュームデータを,異なるパラメーター値を用いてレンダリングして,茶系の画用紙上の色えんぴつ画を再現した。また図 2 に加水効果,消しゴム効果の画像例を示す。提案モデルによって,従来の 2 次元モデルでは困難であった色えんぴつ画らしさが表現できている。

注*ニューヨーク州立大 Stony Brook校 Visual Computing センターで開発された。
審査講評
アーティスティックビジュアリゼーションにとって,既存のペイントシステムの殆どがその存在を無視している「紙」と画材の相互作用が,風合いを生成する上で重要な要素となる点を追究している点に新規性が認められる。不透明水彩,油彩等の他の方式への適用性の検討やCGアートならではの新たな表現への展望も加えて欲しい。