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◆特別賞[ヤング・ビジニア賞]◆
超高速衝突破壊の分子動力学シミュレーション
高坂延良(こうさか・のぶよし)
  大阪府立大学 工学部 航空宇宙工学科 航空宇宙学講座 杉山研究室
中谷敬子(なかたに・けいこ)
  大阪府立大学 工学部 航空宇宙工学科 助手
栢木良典(かやのき・りょうすけ)
  大阪府立大学大学院 工学研究科 博士前期課程1年
杉山吉彦(すぎやま・よしひこ)
  大阪府立大学 工学部 航空宇宙工学科 教授
図1   衝突時の変形の様子とデブリ雲の構造
図1
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a 貫通の様子とデブリ雲(t=3.9ps)
図2
b モデル中央断面のデブリ雲構造(t=2.3ps)
1. はじめに
 宇宙開発の進展とともに,地球周辺の宇宙空間に数多くの残された使用済みロケットやその破片などの宇宙ゴミ(スペースデブリ)が,稼働中の衛星と衝突する速度は,平均で10km/s程度に達し,微小であっても大きな破壊力を持っており,切迫した宇宙環境問題となっている(1)
  本研究では,宇宙ゴミの人工衛星への超高速衝突時の破壊現象を分子動力学(Moleculer dynamics ; MD)シミュレーションによって解析し,超高速現象のシミュレーション結果を時間軸を含む4次元空間的サイエンティフィック・ビジュアリゼーションにより引き出される有益な知見を元に,現象の解明に対してより詳細な考察を加えることを目的とする。

2. 解析モデルと解析方法
 解析モデルは,宇宙ゴミを模擬した球形のプロジェクタイルと人工衛星外壁を模擬した平板のターゲットからなり,いずれもアルミニウムであるとする。また,原子間相互作用は,経験的二体ポテンシャルであるMorseポテンシャル(2)にカットオフ半径での不連続を除去するよう修正を加えたものを用いる。シミュレーション条件によって異なる現象のメカニズムが現われることがわかっているが(3),ここでは紙面の都合上,衝突速度8km/sの場合について紹介する。

3. 解析結果 ―デブリ雲形成過程の検討―
 図1に衝突時の破壊の様子を示す。原子は,プロジェクタイルの運動方向を正として,シミュレーションのスタート時の原子位置からの移動距離に応じて色を付けて描いている。全く移動しないものを青色,100Å以上移動したものを赤色とし,その間を中間色で描いている。
 図1(a)から,ターゲットは破壊され,発達したデブリ雲が観察される。衝突に伴う変形の詳細と,発生するデブリ雲の構造を表現するために,図1(b)に,中央部で,厚さ9.15Åの断面領域に含まれる原子のみを表示する。デブリ雲は,衝突方向に沿って,前方,中央,そして,後方の3つの部分からなる構造を持っていることがわかる。さらに,個々の原子が計算スタート時にプロジェクタイルとターゲットのどちらに属していたかを調べることにより,デブリ雲前方部の構成原子は,ターゲットとプロジェクタイルの両方の破片が混じっていること,中央部は,クラスタが存在し,ほとんどが,プロジェクタイルを構成していた原子,さらに,後方部は,プロジェクタイルの破片からなっていることも確認された。
 これらの可視化の結果得られた,デブリ雲の構造,および,構成する原子の特徴は,Piekutowskiらによって実験的に調べられた結果(4)に一致しており,これらの検討は,可視化することによりはじめて可能となった好例と言えよう。
 なお, BGM, ナレーション付アニメーション作成の際, Avishot (島田憲親氏 作),Ulead社のMediaStudio Proを使用した。
参考文献
1. N.L.Johnson,日経サイエンス,28-11(1998)54-63.
2. L.A.Girifalco et.al.,Phys.Rev.,114(1959)687-690.
3. 中谷 他, 第42回日本学術会議材料研究連合講演会論文集,(1998)263-264.
4. Piekutowski,A.J. et.al.,Int.J.Impact.Eng.,20-6-10(1996)639-650.
審査講評
スケールこそ静止画賞の作品には及ばないものの,切迫した宇宙環境問題に粒子シミュレーションを適用した着眼点の良さと,まとまりのよい一連の作業が評価された。学部生が中心となって行った研究としては最高のレベルに達している。汎用機材を組み合わせたシステム環境を利用して到達できるレベルを具体的に示したことは,今後の応募者にも大いに参考になろう。