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《審査講評》

(敬称略、五十音順)
●太田次郎(江戸川大学学長)
プロフィール
お茶の水女子大学理学部長,お茶の水女子大学大学院人間文化研究科長を経て,1992〜1997年までお茶の水女子大学学長を務めた。1998年より現職。医学・生物を専門とし,細胞,運動,形態形成分野において,長年研究を続けている。1979年には,放送文化基金賞を受賞。現在,メディア教育開発センター評議会副会長,日経サイエンス編集顧問,東レ科学振興会評議員,ミズノスポーツ振興会理事等を務める。
審査講評
今回は51件の応募作品の中から査読審査で16件を選び,シンポジウム形式で発表を行い,それと併行して審査が行われた。審査は,可視化技術,意義・新規性,説得力の三つの観点からなされ,それらを総合して評価した。全体として,汎用ビジュアリゼーションシステムやソフトウェアツールの開発などに関連するすぐれた作品が多く,このコンテストが回を重ねるごとに作品の質が向上していることは喜ばしいと感じた。最優秀賞の作品は,可視化手法が特にすぐれていて,3次元流体の運動の視覚化に見事に成功していた。優秀賞の4編は,それぞれ新規性に富み,新しい可能性を開いた作品であった。特別賞は,それぞれ独自の分野で価値あるものであった。今後,さらに新分野での可視化の可能性に期待したい。

●小林敏雄(東京大学国際・産学共同研究センター教授)
プロフィール
東京大学助教授,教授を経て,1996年より現職。現在,主に日本数値流体力学会会長,自動車技術会副会長,可視化情報学会副会長,日本機械学会理事,計算工学会理事,日本工学アカデミー会員などを兼任。専門分野は流体機械工学。乱流の数値シミュレーション,希薄気体の流れの数値シミュレーション,自動車の空気力学,流体関連振動,流れの可視化結果画像処理に関する研究を行っている。
審査講評
今回のコンテストの最大の特徴は審査方法の精密化である。応募論文それぞれに対して,その分野における複数専門家の査読と審査委員の審議によって1次審査が行われ,以前にもまして内容の評価に重点が置かれた。その中で大賞を得た『サーフィスパスレンダリング法を用いた煙突噴流の可視化』は我々がもっている流れに対する視覚イメージ,たとえば煙粒子の粗密感や奥行き感などをうまく表現したもので,流れの芸術性を高めることに成功している。ニューフロンティア賞を受賞した『心臓腔内血流の定量的可視化』は超音波ドプラーデータのコンピューター処理方法の工夫によって走査断面上の血流の性状を定量化したものである。これらの例にあるように計算結果,測定結果の料理方法に工夫を加えた作品が多く現れてきたのは喜ばしいことである。

●大村皓一(宝塚造形芸術大学映像造形学科教授)
プロフィール
大阪大学工学部電子工学科助教授,大阪学院大学国際学部教授を経て,1996年より現職。工学博士。1982年CGシステム「LINKS-1」を試作および発表,1983年映画「ゴルゴ13」のCG制作総指揮を担当,1985年筑波EXPO'85 富士通パビリオンのCGテクニカルディレクターを務めるなど,さまざまなCG指導に携わる。1994年には,世界リゾート博覧会の関西電力パビリオン出展作業および総合監修を行った。
審査講評
今回は,科学的可視化による映像を実際に使用しながら研究発表を行うという場の中での審査であった。審査は映像中心に行うとはいいながら,実際の場では,講演者の発表のうまさについ引きずられることがなかったとはいえない。しかし,中には映像化の目的を初めに明快に述べて発表に入った講演もあり,これについてはとまどいはなかった。科学的可視化には,さまざまな目的があり,目的に応じて映像表現が異なって当然である。同じ研究内容でも,専門外の人へのプレゼンテーションなのか,科学者自身の新たな発見のための手段としての映像なのかで表現は異なる。コンテストの応募には,映像化の目的をできるかぎり明快に示していただきたいと思う。

●戸川隼人(日本大学理工学部教授)
プロフィール
京都産業大学理学部計算機科学科助教授を経て,1976年より現職。東京大学総合試験所にて電子計算機TACの開発に従事し,その後、航空宇宙技術研究所でロケットの軌道計算,機体の強度計算,数値解析,計算機科学(グラフィックス,数式処理,情報検索など)の研究に従事。現在,ACM,IEEE,情報処理学会,日本応用数理学会,日本映像学会,ソフトウェア科学会の会員を兼ねている。また,著書として「ザJAVA」「花のCG」「有限要素法と差分法」など80点以上を執筆している。
審査講評
最優秀賞の葛生氏の作品は,新しい画期的な手法を提案して有効性を示しており今後各方面に広く応用できるであろう。田中氏の作品は,非常に困難な問題に挑戦して新しい分野を開拓しており今後の展開が期待される。三浦氏の作品は,研究内容はすばらしいが可視化に遊びが入りすぎて学術的な感動が伝わってこないのが惜しまれる。肖氏の作品は,複雑な形状の物体を扱った点が新しい。梅田氏の作品は,研究の発想がユニークで,非常に深く詳しく研究されており,説得力がある。
板倉氏の作品は,可視化技術に関してはまだ改善すべき点があるが,工事現場への応用という意欲的な取り組みを高く評価したい。小紫氏の作品も,可視化がこの種の研究にきわめて有効であることを示している。

●中嶋正之(東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学専攻教授)
プロフィール
東京工業大学像情報工学研究施設助教授,東京工業大学電気電子工学科教授を経て,現職。工学博士。ディジタル画像処理およびコンピュータグラフィックスの研究に従事。現在,電子情報通信学会,テレビジョン学会,計測自動制御学会,日本印刷学会,日本図学会,IEEE,ACM等の会員を兼任。また,「グラフィックスとマンマシンシステム」「コンピュータグラフィックス」「画像情報処理」「マルチメディア工学」(編著)など、多数の画像処理関連の著書がある。
審査講評
毎年のことであるが,年々,提出される作品の質の著しい向上が見られ,今回受賞した16作品はまさに紙一重の差であり,また今回惜しくも賞を逃した作品にも意欲的な作品が多く見られた。審査する責任が益々重くなり,嬉しい悲鳴をあげている次第である。また本年度は,従来にない単純な可視化からさらに一工夫を凝らした作品が集まったことが特徴である。例えば,大型映像施設での上映を目的としたVRによる核融合シミュレーションやMagic Lightによる物体内部の可視化等多彩であった。しかし,ビジュアル化の技術は優秀であるが,それを伝える台詞やバックグランドミュージックは,SIGGRAPHにおける入選作品にくらべまだまだの感がする。さらに見て楽しい作品がそろうことを期待したい。

●森 啓(明星大学日本文化学部教授)
プロフィール
桑沢デザイン研究所,武蔵野美術大学,千葉大学等の講師を経て,現職。ビジュアルデザインを専門とし,タイポグラフィ,ディジタルフォント設計,デザイン教育に携わっている。グラフィックデザイナー,森啓デザイン研究室を主宰。科学雑誌「日経サイエンス」誌の創刊(1971年)以来,1991年まで,アートディレクターをつとめた。
審査講評
今回は,第一段階の[査読]の一部作品と,本選の[審査]の二つの過程を担当した。いずれも,主題の拡がり,作法の質の高さにおいて,昨年よりも一段と充実した感じを受けた。今回の大賞の「煙突噴流の可視化」作品は,流体の可視化の提示という有利さはあるにせよ,経時変化の間合の取り方,比較対照するフェーズの設定等のいずれの軸においても卓越した構成力が見られて異論のさしはさむ余地が無いと思った。[優秀賞・入賞]作品のいずれもなんらかの傑出した特徴があり甲乙つけがたく感じたが,残念な問題は,色調の選択等の色遣いの面で,多くの作品が幼児のクレヨン画のような原色を用いていたことであった。微妙な色調の差異を一つの作品としてまとめるような,いわば大人の成熟した色遣いを期待したいところである。

●藤代一成(お茶の水女子大学理学部情報科学科教授)
プロフィール
東京大学理学部情報科学科助手,筑波大学電子情報工学系助手・講師を経て,お茶の水女子大学理学部情報科学科助教授となる。その後,平成6年2月から1年間アメリカ合衆国New York州立大学Stany Brook Computer Sclence学科客員教授として務め,現職。 理学博士。現在,IEEE Technical Committe on Computer Graphics委員,IEEE Visualization 国際会議プログラム員などをつとめる。また,情報処理学会,日本原子力学会,計算工学会,可視化情報学会,日本バーチャルリアリティ学会,ACM,IEEE Computer Societyなどの会員も兼任している。
審査講評
回を重ねるたびに,アニメーション・静止画ともに,可視化に臨む透徹さや仕上げは随分とレベルアップしてきた。また,探究的・発見的な可視化を目指す作品が増えた点も好ましい。可視化を通じて明らかとなった事象を裏づける実証実験を組み合わせる工夫を加えれば,インパクトはさらに増すだろう。さらに,公的機関や民間企業等で推進している大型プロジェクト,汎用ビジュアリゼーションシステムやソフトウェアツールの開発に関連する投稿も目立った。対話性のビジュアルな訴求力に関しては,なお一層の向上を望みたい。

●松尾義之(日本経済新聞社出版局編集部編集委員)
プロフィール
日本経済新聞社入社,出版局サイエンス編集部,日本経済新聞社出版局科学出版部次長を経て1998年3月より現職。1985年から11年間,シンクタンク(科学技術番組)のキャスターを務め,1996年にATP賞を受賞。日経サイエンス誌上で科学や技術に関する解説記事を多数執筆。『日曜日のサイエンス読本』(共著)をはじめ,多数の共著書,共訳書がある。通産省工業技術院プロジェクト評価委員や神奈川科学技術アカデミーの企画委員などを歴任。
審査講評
AVS大賞の作品は,出来栄えはもちろんだが「新しい手法の開発」という,かけがえのない財産を人類にプレゼントしてくれたものである。本コンテストの社会的貢献という点でも胸を張れるものと思う。SGI賞の作品や入選作のデスモスチルスの復元のように,私たちの想像力をふくらませてくれる作品は魅力的だった。それは,私たちがまさに新しい"目"を獲得しつつあることを実感させてくれたからである。映像技術の点でもますますレベルアップし,なかには「あっ,これは現実の画像ではないんだ」と思い直すものさえあった。作品を寄せられたすべての方々の努力と才能に敬意を表する。なお,今回グループ作品として応募された方も,ぜひ来年は単独作者として新しい作品を送っていただけたらと思う。