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「ヘリコプタ騒音の可視化及び可聴化」
青山剛史(あおやま・たかし)
  科学技術庁航空宇宙技術研究所 数理解析部応用解析研究室
齊藤茂(さいとう・しげる)
  科学技術庁航空宇宙技術研究所 空力性能部操縦面空力性能研究室長
末松和代(すえまつ・かずよ)
  科学技術庁航空宇宙技術研究所 数理解析部視覚化技術研究室主任研究官
藤野敦志(ふじの・あつし)
  科学技術庁航空宇宙技術研究所 数理解析部視覚化技術研究室臨時職員
宮川里子(みやがわ・さとこ)
  大塚電算研究所
青木誠(あおき・まこと)
  川崎重工業(株) 明石技術研究所 機械研究部研究2課
図1  ヘリコプタのブレードと渦が干渉する様子
図1
上は平面図,下は斜め上方から見た図
図2  翼端形状の異なる5種類のブレードの翼面上圧力分布と騒音波形
(a)矩形
(a)矩形
RealPlayer
(b)下反角 (b)下反角
(c)上反角 (c)上反角
(d)後退角 (d)後退角
(e)前進角 (e)前進角
この作品は,ヘリコプタのブレードが,先行するブレードから吐き出された翼端渦と 干渉する際に起こる翼面上の圧力変動を可視化し,さらにその際生ずる騒音を可聴化したものである。
1.研究の背景
 都市部におけるヘリコプタの有効利用を妨げている原因の1つとして騒音問題がげられる。中でも,メイン・ロータのブレードと翼端渦が干渉する時に起こるブレード/渦干渉(Blade-Vortex Interaction: BVI)騒音は,バタバタと聞こえる極めて耳障りなものである。この騒音は,図1に示すように,メイン・ロータのブレードが,先行する他のブレードもしくは自身の放出した翼端渦を切ったり,その近くを通過する時に,ブレードの空力荷重が急激に変動することによって生ずる。発生条件は機体に よって異なるが,一般的に低速降下中や急旋回時に発生しやすく,前進方向の下方に 強く伝播するので,ヘリコプタが着陸する際,付近の住民に与える影響が大きい。
 航空宇宙技術研究所と(株)コミュータヘリコプタ先進技術研究所は1994年より騒音低減に関する共同研究を開始し,まず翼端形状を工夫することによってBVI騒音を低減する研究を行った。ここでは,基準となる矩形の翼端を持つブレードに加えて,翼端に上/下反角,前進/後退角を持つブレードを考え,これらの形状がBVI騒音に及ぼす影響を調べた。
2.解析法(詳細は参考文献を参照されたい)
 解析法は4段階からなっている。まず1段階目は,ヘリコプタ全体にかかる力の平衡状態を求め,ブレードと翼端渦の位置関係を算出するトリム解析である。この段階では,計算時間と収束性の限界から,方位角方向に10°刻みの計算を行っている。しかし,ブレードと翼端渦の干渉は瞬時の現象なので,この刻み幅では精度不足である。
そこで,2段階目でブレードと翼端渦の位置を1°刻みに補間し,方位角方向の精度向上を図ったうえで,渦によってブレード上に誘導される速度を算出する。これをもとに,3段階目の3次元非定常オイラー方程式を解くCFDコードによる空力計算を行う。
 ここで得られたブレード上の圧力分布から,4段階目のFfowcs Williams and Hawkings の式に基づく空力騒音解析コードで,任意の観測点における音圧,即ち騒音を計算することになる。
3.可視化及び可聴化
 図2の(a)から(e)は,低速降下中のヘリコプタのブレード上圧力分布とそれに同期させたBVI騒音の波形を,先に述べた5種類の翼端形状に対して可視化したものである。紙面には示せないが,動画にすることにより,圧力分布が非定常的に変化する様子がとらえられ,翼端渦がブレードの近くを通過する際に生ずる急激な変動も明確に把握することができる。空力及び空力騒音の計算に用いたのは航技研の数値風洞と呼ばれるベクトル型並列計算機で,可視化にはCray Y-MP M92を用いた。可視化のソフトウェアは,航技研が独自に開発したものである。
 従来,騒音の解析は,計算から得られた波形を目で評価することによって行われてきたが,騒音は実際にそれを聴いてみないと,どの程度耳障りかわからないという問題があった。そこで,本研究では,計算から得られた騒音波形を可聴化することによって,騒音解析をより現実的なものにすることを試みた。可聴化は本作品の主要テーマであるが,これを読者の皆さんにお聴かせできないのはとても残念である。可聴化のソフトウェアとしては,MacintoshのSuper Scope IIを用いた。
参考文献
Aoyama,T., Kondo,N., Aoki,M., Nakamura,H., and Saito,S.,
Calculation of Rotor Blade-Vortex Interaction
Noise using Parallel Super Computer, 22nd European
Rotorcraft Forum, Paper No.81, 1996.
協力
磯部俊夫(いそべ・としお) 科学技術庁航空宇宙技術研究所
数理解析部 視覚化技術研究室長
近藤夏樹(こんどう・なつき) (株)コミュータヘリコプタ先進技術研究所
研究第1部第3分室
中村英明(なかむら・ひであき) (株)コミュータヘリコプタ先進技術研究所
研究第1部第3分室
山川榮一(やまかわ・えいいち) (株)コミュータヘリコプタ先進技術研究所
研究第1部長
小林陽子(こばやし・ようこ) 科学技術庁航空宇宙技術研究所
数理解析部 数値シミュレータ研究室 臨時職員
審査講評
現実に見聞きする具体的な対象に対し,科学的な取り組みをすることによって,大きな成果をあげている。羽の形状を変えるといかに騒音が変化するかということを,可視化と可聴化を組み合わせることによって同時に表現し,意義深いものにしている。題材の選択,ナレーション,全体の構成等,総合的なバランスが最も優れた作品である。