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優秀賞「日経サイエンス賞」(学生作品対象)
『X線CTスキャナによる隕石の三次元構造』

●近藤眞弘(こんどう・まさひろ)
大阪大学大学院 理学研究科宇宙地球科学専攻 修士1年


5枚の画像は,直径8mmの円筒形に切り出したMoorabie隕石の
三次元構造を表しており,上の1枚と下の2枚では隕石中に存
在しているFe-Ni合金,FeSの空間的な分布が緑色や紫色で表さ
れている。また,中段の2枚はともに垂直方向に切り出した断面を
表しており,ここではFe-Ni合金、FeSは黄色及び濃紺色で表され
ている。この2枚では隕石中のコンドリュールも多数見えている。


 隕石は主に火星と木星の間にある小惑星帯から飛んで来るが,地球上の岩石とは異なりこの地球や太陽系が誕生した当時の情報を保存していると考えられており,我が研究室ではそのような隕石を研究することで太陽系形成時の様子を解明しようと試みている。隕石の組織を解析する方法としては,これまでは地球上の岩石と同じように試料を切り出してその薄片を作り光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察するといった方法が一般的であったが,この方法では二次元的な情報しか得られず,また試料を破壊してしまうという欠点がある。隕石といった貴重な試料を破壊してしまうというのは非常に大きなマイナスとなるので,この点を改善するためにX線CTスキャナを用いた組織解析を試みたのである。この方法では試料の破壊を伴わず,また連続的に撮影した多重スライスから三次元的な内部構造の解析が可能となる。            

 X線CT像の撮影は複合型高分解能X線検査装置(日鉄エレックス製,NX-CP-0200-IL-001)を用いて行った。この装置は,X線検出器として512×512個の素子が平面状に並んだ area sensor を持っており,一回の撮影で約100枚の断面が得られる。またマイクロフォーカスX線源(焦点寸法3ミクロン)を用いており,これとX線検出素子数,試料の拡大率,及びスライスの厚みによって決まる空間分解能はおよそ15ミクロンである。 試料はMoorabie隕石を使用し,X線CT像のハレーションを抑えるため直径8mmの円筒形に切り出した。スライス厚みは15ミクロンで,15ミクロン間隔で連続的に合計27枚のX線CT像を撮影し,この27枚のX線CT像をコンピューター上で再構成して隕石の三次元構造を再現したものが今回の画像である。

 使用したコンピューターはアップル社のPower Macintosh 9500/132で,これに撮影したX線CT像を取り込み,Spyglass Dicer 2.0というソフトを用いて三次元像を再構築した。これは同じサイズの多重スライスを積み重ねて三次元像を再構築し,任意の箇所でスライスを作ったりまた今回のようにある階調の色の部分だけ抽出する事ができるというソフトである。今回用いた画像はTIFFフォーマットの画像で,できた画像は縦横512×512ピクセル,高さは53ピクセルで表されており,グレースケール256階調の元画像に擬似的に色を付けたものである。

 このように非破壊で隕石の三次元的な構造を再構築することで,貴重な試料を減らすことなく研究に役立つ様々な情報が得られる。例えば隕石中にはよくFe-Ni合金をFeSが取り囲んでいる構造が見られるが,それが三次元的にどのように取り囲んでいるのか,また本当にFeSがFe-Ni合金を取り囲んでいるのかどうかといったことが分かるのである。三次元像の中で緑色や紫色で三次元的な分布を示している像があるが, これらはいずれも隕石中のFe-Ni合金やFeSの部分であり,このようにその空間的な分布が非常にわかりやすく表されている。また隕石中にはコンドリュールと呼ばれるケイ酸塩からなる直径0.数mm〜数mmの球体がよく見られるが,これも同じようにその三次元的な分布を知ることができ,コンドリュールの三次元的な形態,つまり扁平の仕方なども分かる。今まで得ることのできなかったこのような情報から,太陽系の初期の状態がより正確に解明できるようになるのである。

 このような非破壊での三次元構造の解析は隕石や地球上の岩石の研究において,次世代の組織解析の方法としてこれからの発展が非常に期待されている。