| この作品は宇宙で頻繁に起こっている銀河同士の衝突をシミュレーションしたものである。シミュレーションの結果,実際に観測されている珍しい形の二つの銀河(車輪銀河,アンテナ銀河)を再現することに成功した。なおこの作品は東京北の丸の科学技術館内のユニバースにおけるプログラムの一部として上映されている。 |
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| 1.可視化の対象 |
| 宇宙には一兆個の恒星の集団である銀河が無数に存在している。銀河の形状は多種多様であるが,それらの多くはハッブル分類と呼ばれる銀河の一連の分類法によって大まかに楕円銀河と円盤銀河の二種類に分類される。また,ハッブル系列のいずれにも含まれない,不規則な形状を示す銀河も存在する。>BR>
そのような不規則な形状の銀河は銀河同士の衝突や近接遭遇によるものと考えられている。銀河団の中心等,個数密度の高いところではこのような重力相互作用によって生まれた特異な構造を持つ銀河が数多く観測されている。特に「車輪銀河」と「アンテナ銀河」はその形状の特異さ・力学的構造・星形成分布などの観点から注目されている。 |
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| 2.シミュレーションの概要 |
今回の数値実験では,現在の天文学研究で実際に使用されている最新の銀河モデルを採用した。
円盤銀河は,おおまかに言って,若い恒星と水素ガスとからなる円盤状の成分と,古い天体を含む球状分布のハロー成分で構成されている。過去の数値実験では主に恒星の運動のみを考慮したものがほとんどであった。しかし最近の計算機技術の発達によって,銀河円盤中に於ける水素ガスの運動をも考慮出来るようになるなど,銀河の力学的進化のシミュレーションに,より複雑な物理過程を導入する事が出来るようになった。今回星間ガスの運動を表現する方法として「クラウド粒子法」を用いた。また星間ガスから恒星への転換である星形成率については「シュミット則」を使用した。
また今回の数値計算で使用したデータは,観測で分かっているものについてはそれらを使用し,分かっていないものについてはある程度のモデル化や仮定を行った。 |
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| 2-1 車輪銀河 |
| 小規模な球状銀河を典型的な大きさの円盤銀河の中心部に向けてその軸方向に沿って進ませて衝突させる数値計算。実際の車輪銀河には二つの伴銀河が見られるが,今回は観測写真右上のもの(ESO-350-40B)が衝突したと仮定して計算した。小さい銀河が1万個,大きい銀河が4万個の粒子で表現されている。シミュレーション全体の計算時間は1800ステップで約13時間である。 |
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| 2-2 アンテナ銀河 |
| 典型的な大きさの円盤銀河を互いに回りこむようにして相互作用させる数値計算。実際の銀河(NGC4038/4039)のうち,どちらが手前にあるかがまだ良く分かっておらず,またそれによって軌道要素が反転するのだが,今回は,NGC4038(中心核が観測写真右側にある方)が最終的に手前にくるような軌道を採用した。また,軌道に対する銀河円盤の傾き方にも任意性があるが,これについては,複数の値で実際に計算させ,その結果の中から最も良く再現したものを採用した。それぞれの銀河は5万個の粒子で表現されている。シミュレーション全体の計算時間は1800ステップで約40時間である。 |
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| 3.可視化の手法と意義 |
シミュレーション結果をよく理解するために,本作品では3次元アニメーション表示を行い,かつ視点を動かして全体の形状を把握しやすくした。
仮に計算結果のいくつかの場面を取り出し,様々な方向からの画像をじっくり見ればある程度までは系の時間的変化を理解することは出来るであろう。しかしそれにはかなり時間がかかり主観的な判断が入らざるを得ない。3次元アニメーションにすれば誰でもがすぐにより正確に理解することが出来る。例えば円盤銀河が差動回転(円盤銀河の回転速度は外側より内側の方が速い)している様子やアンテナ銀河のアンテナがどのように伸びていくかなどがよく分かる。3次元アニメーションによる可視化が大いに役立っているといえる。 |
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| 4.制作環境 |
| 使用したハードウェアは,Silicon Graphics社Onyx Reality Engine 2 (R8000-90MHz×2)である。シミュレーションにおいては重力多体問題専用計算機GRAPE-3AF×2も同時に使用した。使用したソフトウェアについてはシミュレーション部分,可視化部分とも応募者の自作である。 |
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