| 1.可視化の対象 |
この数値シミュレーション及び可視化の対象は,迎え角(翼を横から見たときの,翼の進行方向からの傾き)が周期的に増減する翼まわりの流れの振舞いである。一般に,流れの中に置かれた翼には抵抗のほかに流れと垂直な方向の力がはたらく。これは揚力と呼ばれる。揚力は,迎え角を大きくすることによって増加していく。しかし迎え角がある角度(静的失速角)を超えると流れは乱れ,揚力が減少してしまう。これは失速と呼ばれ,飛行機にとって重大な結果をもたらすことになる。
ところで,翼の迎え角をある値以上の角速度で大きくしていくと,動的失速(ダイナミックストール)と呼ばれる興味深い現象が発生する。これは,迎え角が静的失速<角を越えても高い揚力が持続し,もっと大きな迎え角において揚力が急激に減少し、翼を振動(迎え角を増減)させた場合に,迎え角−揚力曲線がヒステリシスを描くという現象である。この現象は航空工学的に非常に重要であり,特にへリコプターのローターにおいて重要になってくる。> |
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| 2.数値解法 |
| 詳しい計算方法,及び計算条件については参考文献[1]を参照していただくとして,ここでは数値計算の概略のみを述べる。基礎となる方程式は質量保存則を表す連続の式,及び運動量保存則を表す Navier-Stokes 方程式である。 |
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| ここで u,p ,t はそれぞれ速度,圧カ,時間である。音速に比べて遅い流れを対象とするため、流体の圧縮性は無視できるものとする。また時間と共に迎え角が変化する翼まわりの流れ場を計算するために,物理空間から計算空間への時間を含んだ座標変換を採用する。(2)式と,その発散をとって得られる圧力についての Poisson方程式とを,この計算空間において差分法を用いて解くことになる。 |
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| 3.可視化の手法 |
対象としている現象においては,翼の先端から剥離する渦の挙動が重要な役割を果たす。このような非定常な現象を理解するためには,各瞬間の流れ場だけをみるのでは不充分である。そこで,計算によって求められた物理量のうち,3つの量(圧力,渦度,速度)を同時に表示して動画化することにした。バックの白黒の濃淡は圧力場を表している。白い部分が圧力の高いところ,黒い部分が圧力の低いところである。また,色付き等高線で渦度を表示している。渦度とは流体の微小部分の局所的な回転の強さを表す量である。青い線は時計回りの渦度,赤い線は反時計回りの渦度の等高線を示す。速度場を表現するために,流れにのって運動する微小な粒子を仮想的に注入,その動きを追うことにした。これらの粒子は翼の上流から一定間隔で注入されている。
紙面では動画として見ていただけないのが残念であるが,掲載されている写真は動画の中から選んだ代表的な瞬間である。1周期の振動の内,(a)から(f)まで次第に<迎え角(α)が増加していく過程を追っている。>
(a)まだ大きな剥離は起きていない。
(b)翼の先端からの剥離が起きている。これが,ダイナミックストール渦と呼ばれる渦の発生した瞬間である。
(c)先端から剥離した渦が成長し,この渦に誘起された第2,第3の渦が発生しているのが観察される。
(d)翼の中心付近に大きく成長したダイナミックストール渦がみられる。この時,揚力が最大になっている。
(e)ダイナミックストール渦が後方に流れ始めている。揚力は急激に減少しつつある。
(f)翼の表面近くにあった第2の渦(反時計回り)が大きく引き延ばされ,翼から離れた一様流の中に吹き出しているのが観察される。 |
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| 4.制作環境 |
| 数値計算,及び可視化に用いたハードウェアは,日立スーパーコンピュータS820/80,同社のリアルタイムアニメーションシステム,及び(株)計算流体力学研究所のNVS2000である。ソウトウェアは(株)計算流体力学研究所のNAGARE及びSvivid2Dを用いた。 |
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| 5.参考文献 |
| [1] |
H. Suito, K. Ishii, and K.Kuwahara, "Simulation of Dynamic Stall by Multi- Directional Finite-Difference Method", AIAA paper, 95-2264, 1995. |
| [2] |
W. J. McCroskey, "Unsteady Airfoils", Annu. Rev. Fluid Mech.Vol. 14, p p285-311, 1982. |
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