遺伝子組み換え作物
1. イントロダクション
2. 新しい種子の交配
3. 従来の品種改良の限界
4. 植物の病気を上手に利用
5. 望ましい遺伝子の探索
6. クラウンゴール菌とBt遺伝子の出合い
7. 遺伝的な障害
8. ウイルス抵抗性
9. 除草剤耐性
10. 遺伝子組み換え植物がもたらした問題
11. さまざまな可能性を求めて
12. クレジット
除草剤耐性
 害虫や病気は農作物にとって命取りだが,雑草はじわじわと作物を痛めつける。栄養分や水分,太陽光を雑草と奪い合う結果,作物の収穫量が70%も減ってしまうこともある。一般的な対策としては,雑草のタイプに応じて,それぞれに有効な除草剤を何種類か畑にまく。しかし,多くの除草剤は雑草だけでなく作物にも悪影響を及ぼすうえ,大気や水を汚染してしまう。植え付けの前に畑を耕して雑草を取り去ったり,環境への影響が少なく有効範囲の広い除草剤を作物が芽を出す前にまく手もあるが,こうした対策をとると畑が風や水による侵食を受けやすくなる。

 最近,生物工学に基づく新しい手段が登場した。除草剤耐性を持つ作物をつくり,これが発芽してから有効範囲の広い除草剤を散布する方法で,モンサント社の生化学者ジャウォースキ(Ernest Jaworski)らが発案した。

 1960年代末,ジャウォースキはグリホサートという単純な化合物でできた新しい除草剤の作用を解明したいと考えた。多くの除草剤は特定の2〜3種類の雑草にしか効かないが,この新除草剤はさまざまな種類の植物に対して高い効果を発揮する。なぜグリホサートは多くの雑草に有効なのか?

 ジャウォースキはこのユニークな除草剤の働きを3年がかりで解明した。グリホサートは植物にとって重要な生化学的な反応経路を邪魔することを明らかにし,1972年に論文発表した。その数年後に,ドイツの科学者がグリホサートは特に「EPSPシンターゼ」という酵素の働きを阻害することを突き止めた。この酵素はあらゆる植物に不可欠な酵素だ。

 この情報も,生物工学と結びつかなければ,あまり価値はなかっただろう。生物工学によって初めて,グリホサートに耐える遺伝子組み換え作物ができるのだから。1983年に,カルジーン社とモンサント社の研究者がEPSPシンターゼをつくる遺伝子を分離し,複製に成功した。次に,モンサント社の研究者がこの遺伝子に手を加え,遺伝子からつくられる酵素がグリホサートの影響を受けないようにした。そしてこの遺伝子をA. チュメファシエンス・ベクターを使って作物に導入した。1985年に報告された通り,こうしてつくられたトマトなどの作物はグリホサートに妨害されないEPSPシンターゼをつくった。1996年には,グリホサートに強いダイズやワタ,ナタネ,トウモロコシの種子が登場した。他の除草剤に耐性を持たせた植物も遺伝子工学によって作られた。環境に“優しい”除草剤に対する耐性を持たせたものだ。これらの除草剤耐性作物は土壌や水質の保護に役立つ。除草剤耐性作物が土から芽を出したら,畑にグリホサートを散布して雑草を駆除すればよい。

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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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