遺伝子組み換え作物
1. イントロダクション
2. 新しい種子の交配
3. 従来の品種改良の限界
4. 植物の病気を上手に利用
5. 望ましい遺伝子の探索
6. クラウンゴール菌とBt遺伝子の出合い
. 遺伝的な障害
8. ウイルス抵抗性
9. 除草剤耐性
10. 遺伝子組み換え植物がもたらした問題
11. さまざまな可能性を求めて
12. クレジット
従来の品種改良の限界
 農民たちは何世紀も前から,奇妙なことに気づいていた。ある植物が病害虫で壊滅的な打撃を受けているのに,すぐそばに生えている同じ種の植物では被害が比較的軽く,生き延びるものもあるのだ。1905年,英国ケンブリッジ大学のビッフェン(Sir Roland Biffen)は植物の丈が高いか低いかが遺伝するように,植物は病害虫への抵抗性を遺伝で受け継いでいるのではないかと考えた。彼は2品種のコムギを使って実験し,サビ菌の感染に抵抗する能力が実際に遺伝することを示した。この発見によって,病害虫抵抗性を備えた作物品種を作り出そうとする農民や育種家の試みが盛んになった。

 同様の試みは今日でも続いている。まず,多数の植物品種を調べて,特定の病害虫に抵抗性をもつ品種を探し出す。次に,栽培面積あたりの収穫量が多いなどの特性をもつ品種と抵抗性品種とをかけあわせる。優れた形質のものを慎重に選択し,子孫を繰り返し交配することで,最終的には収穫量が多く病害虫抵抗性も備えた品種を生み出せる。しかし,このプロセスには極めて長い時間がかかり,新品種の実用化までに15年以上かかることもある。

 従来の育種法には,近縁関係にある植物種の間でしか交配できないという問題もある。また,特定の真菌や害虫に抵抗性を持つ品種がそもそも自然になければ,抵抗性品種を作り出すことはできない。さらに,抵抗性に関係する遺伝子は作物の質に悪影響を与える遺伝子と密接に関連している場合が多く,両方の特性が常に一緒に遺伝してしまうことになる。例えばレタスの害虫抵抗性は苦味の形質と一緒に遺伝する。1990年代初期には,ワタやトウモロコシ,イネなどの農作物の病害虫抵抗性を改善しようと育種家が大変な努力を払ったにもかかわらず,全世界でこれら作物のほぼ1/4が害虫や病気のために失われた。
   
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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