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BEYOND DISCOVERY
日経サイエンス
エイズウイルスを無力に
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1. イントロダクション
2. 酵素の働きを探って
3. 阻害剤を設計する
4. エイズへの挑戦
5. ウイルスの繁殖を抑える
6. 標的をたたく
7. 新たな展望
8. クレジット
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BEYOND DISCOVERY
THE PATH FROM RESEARCH TO HUMAN BENEFIT
■新たな展望
 プロテアーゼ阻害剤の有効性ははっきりしているが,いくつかの欠点もある。まず,誰にでも効くわけではない。もう1つは,HIVがすぐに変異してしまうため,薬剤耐性が問題となっている。また,プロテアーゼ阻害剤が効果を発揮する場合でも,重い副作用が生じる例がある。体の代謝や脂肪蓄積などを劇的に変えてしまうようだ。吐き気や下痢,腎臓結石,うつ状態,不安症などの副作用があり,エイズ患者によってはこれらを抑えるために別の薬が必要になる。
 
 製薬会社はより安全な新世代のプロテアーゼ阻害剤の開発を続けており,ウイルスがどのように薬剤耐性を獲得するのかを解明しようと努めている。一方,既存の阻害剤を以前とは違った組み合わせ方で使うと,効果を高められる可能性があることがわかってきた。例えば阻害剤の中には肝臓での薬剤代謝を遅くするものがあり,他のプロテアーゼ阻害剤が体内に残留する時間を伸ばせると見られている。つまり,ある種のプロテアーゼ阻害剤を使えば,他の阻害剤の投与量を減らせるだろう。
 
 プロテアーゼ阻害剤がエイズ治療で条件つきとはいえ成功を収めたことで,他の病気の治療にも応用しようという研究が一挙に活発化した。すでにC型肝炎ウイルスとサイトメガロウイルス,ライノウイルスのプロテアーゼの構造が解明されている。サイトメガロウイルスはエイズ感染者に致命的な臓器感染を引き起こすヘルペス型のウイルスであり,ライノウイルスは風邪の原因として知られる病原体だ。さまざまなウイルスのプロテアーゼの構造を調べるなかで,ウイルス性疾患以外の病気についてもプロテアーゼが重要だとわかってきた。例えばプロテアーゼは骨粗鬆症や炎症に関与しているようだし,脳細胞を殺して脳卒中やアルツハイマー病の一因になっている可能性もある。
 
 HIVプロテアーゼ阻害剤の真の成功は,現代のドラッグデザインに革新をもたらしたことにある。HIVプロテアーゼは構造に基づくドラッグデザインのお手本であり,ウイルスに対するワクチンのデザインにもつながっている。過去10年にわたるHIVプロテアーゼ阻害剤の研究で開発された技術は,アミノ酸やX線結晶解析の基礎研究によって培われた基盤の上に築かれた。生化学を深く理解しようと探求を重ねた多くの科学者のおかげで,死の病に取りつかれた患者たちも未来のことを再び考えられるようになったのだ。
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原文はNASのBeyond Discoveryでご覧になれます。
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