GPSの開発史
この年表は原子時計など,GPSの開発につながった物理分野での初期の研究例を中心にまとめてある。こうした長期的な基礎研究がついには社会に重要な便益をもたらすことがわかるが,年表はGPS開発の全容をカバーしてはいない。
1938〜1940年
  1938年にコロンビア大学のラビが分子線磁気共鳴法を発明,同僚とともに磁気共鳴の手法を原子・分子の基礎研究に生かす。重力赤方偏移の検出に原子時計を利用する可能性が検討される。ラビは1944年にノーベル賞を受賞。
1949年
  ハーバード大学のラムゼーが高精度の磁気共鳴法を開発(1989年にノーベル賞受賞)。ザカライアスがラムゼー法を利用したセシウムの「原子泉」時計を提案。重力赤方偏移を検出できる精度。
米国規格基準局がアンモニアガスによるマイクロ波吸収を利用した原子時計を開発。セシウムビーム原子時計の開発始まる。
1954年
  コロンビア大学のタウンズがアンモニア分子からの放射に基づく初のメーザーを開発。タウンズは1964年のノーベル物理学賞を共同受賞。
1954〜1956年
  ザカライアスとナショナル・カンパニー社が初のポータブル原子時計「アトミクロン」を開発。
1957年
  ソ連が10月にスプートニクを打ち上げ。MITリンカーン研究所とジョンズホプキンス大学応用物理学研究所(APL)がドップラー効果を利用した衛星追跡を開始。11月,米海軍のトランジット計画がAPLで始動。
1959年
  パリの高等師範学校のカスレとMITのブロッセルが光ポンピング法を開発。カスレはこの業績でノーベル賞を受賞。
1960年
  ラムゼーと教え子のクレップナー,ゴルデンバーグがハーバード大学で水素メーザーを開発。
1960〜1965年
  光励起ルビジウムの原子時計が登場。セシウム原子の周波数に基づく時間標準が世界の標準技術研究所に導入される。
1961年
  軍事利用を目的に,GPSの開発がエアロスペース社で始まる。
1964〜1965年
  トランジット衛星からの信号をもとに,ポラリス潜水艦が自分自身の位置を計算するのに成功。
1967年
  トランジットシステムの民間利用が可能に。
1968年
  防衛ナビゲーション衛星の技術基準が固まる。
1973年
  米国防総省がナブスターGPSの開発を決定。
1974年
  最初のGPS試験衛星が打ち上げられ,ルビジウム原子時計などをテストする。
1977年
  初の宇宙用セシウム原子時計などを搭載した試験衛星が打ち上げられ,後のGPS衛星の基本が固まる。
1978〜1985年
  10基のプロトタイプGPS衛星が打ち上げられる。製造はロックウェル・インターナショナル。
1989〜1993年
  24基の実用衛星が年に6基のペースで打ち上げられる。最後の打ち上げは93年6月26日。
1996年
  ホワイトハウスがGPSの高精度信号を開放する方針を発表。