日経サイエンス1993年:掲載論文一覧

「日経サイエンス」掲載論文一覧
 ※各項目は,掲載ページ,論文名,著者名,内容の要約の順に並んでいます。

 

 

1993年1月号

P16「高純度金属」

安彦兼次(生まれ変わる鉄)/加藤正憲(先端技術分野で活躍する銅)/紀隆雄(アルミニウムでわかる

金属の素顔)

見慣れた金属も高純度化すると,耐食性や硬さなどの性質が劇的に変わる。超高純度金属はそれ自身が

新しい材料であるとともに,理想的な高性能金属材料を生み出すカギを握っている。

 

P38「宇宙の大きさの測り方」

W.L.フリードマン

ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって,宇宙の膨張率をめぐる60年以上の長い論争にピリオドが

打たれようとしている。

 

P50「巨大ソフトウエアに潜む危険性」

B.リトルウッド/L.ストリジーニ

巨大ソフトウエアはバグ(不良)を完全に除去することが事実上不可能であり,安全性を確保する

ためには,万能視せずに使用を制限しなければならない。

 

P60「生体分子グラフィックス」

A.J.オルソン/D.S.グッドセル

分子構造の解明,酵素の活性部位の特定,機能を阻害する薬剤の設計など,コンピューター

グラフィックスは生体分子の研究に不可欠の道具となっている。

 

P94「動物進化の“ビッグバン”」

J.S.レビントン

約6億年前のカンブリア紀に起こった動物の多様化の爆発的現象の際に,現生動物の基本的な

ボディプラン(生物の形態)のほとんどが現れた。

 

P106「マイクロメカニクスの最前線」

G.スティックス

エレクトロニクス技術を応用することにより,マイクロモーターなどの微小部品をシリコン基板上に

無数に形成したり,大量生産できるようになった。

 

P132「コロンブス時代の天文学」

O.ギンガリッチ

コロンブスのアメリカ大陸発見は,当時の地図を大きく書き換えただけでなく,天動説衰退の

後押しもすることになった。

 

 

1993年2月号

P12「エイジングの科学」

R.L.ラスティング(老化を支配しているのは何か)/加治和彦(老化を刻む“時計”を探す)/

古川雄祐・照井康仁・大田雅嗣・斎藤政樹(血液細胞系の老化)/石浦章一(脳の老化と

アルツハイマー病)

老化とは何か–この生命科学にとっての究極の問いかけに対し,細胞,タンパク質,遺伝子のレベルで,

さまざまな研究が行われている。その結果,老化を制御する遺伝子の発見や,細胞周期と老化の関係が

解明されつつある。

 

P46「反陽子を保存する“魔法びん”」

G.ガブリエルス

1万個の反陽子を2カ月間完全に保存できるような超低温の真空容器が開発された。陽電子を

束縛させれば「反水素原子」が創れるだろう。

 

P66「定向進化をまねた分子進化工学」

G.F.ジョイス

自然界の進化の仕組みをまねて,さまざまな生体分子の集団の中から,目的にかなった分子を

“進化”させようという試みが始まっている。

 

P76「サルの言葉とサルの心」

R.M.セイファース/D.L.チニー

ベルベットモンキーは,捕食者を見つけると“言葉”を使って,仲間に知らせる。しかし,仲間が

自分とは違う考えや知識をもっていることが理解できない。

 

P86「声はどのようにして出るのか」

R.T.サタロフ

声が出る仕組みが詳しくわかったのは,この20年のことである。そのおかげで,声の治療技術が

飛躍的に進歩した。

 

P96「米国はアジアの教育に学べ」

H.W.スティーブンソン

北京,台北,仙台,シカゴ,ミネアポリスで学校教育を調査した結果,時間割りや教え方など,

多くの点でアジアの方が優れていることがわかった。

 

 

1993年3月号

P8「サンゴの白化は地球温暖化のあらわれか」

B.E.ブラウン/J.C.オグデン

海水温の上昇によって,世界中でさんご礁が白くなる現象が起きているが,これは,地球が

温暖化している証拠なのだろうか。

 

P18「見直される天の川銀河の形成過程」

S.バンデンバーグ/J.E.ヘッサー

天の川は複数のガス雲が合体して原始銀河となり,それが収縮してできたらしい。だが,円盤と

外側のハロー部分の進化・形成については未解明である。

 

P28「マダガスカルのキツネザル」

I.タターサル

マダガスカルのキツネザルたちは,5000万年前の霊長類の祖先によく似ていて,私たち霊長類の

たどった進化について多くのことを教えてくれる。

 

P48「科学の挑戦」

日経サイエンス編集部+SA編集部

いまや人類は,宇宙の果てや宇宙の創世時までも研究の対象にしている。しかし,こうした“究極”と

いえる研究がなされるようになっても,科学に限界が見られることはない。新たな知識は新たな謎を

呼び,現在も,世界中で多数の魅力的な挑戦が繰り返されている。

 

P96「究極の半導体構造『量子点』」

M.A.リード

点状の半導体微細構造「量子点」は,量子サイズ効果を利用した自然界にない“原子”であり,

物理学や化学,電子デバイスに新しい研究領域を提供する。

 

P104「広がる複雑適応系の研究」

R.ラサン

生態系や経済システムなど,環境に適応できる要素の複雑な集まりである「複雑適応系」の挙動を

解明する研究が,盛んになってきた。

 

P114「大陸はいつから動いていたか」

D.ヨーク

岩石に残された放射性同位体の壊変と古地磁気記録を解読した結果,35億年前にも大陸は現在と

同じ速さで動いていたことが明らかになった。

 

P124「現代神経科学の先駆者ドナルド・ヘッブ」

P.M.ミルナー

「ヘッブ・シナプス」に名を残すこの偉大な心理学の理論家は,神経生理学の立場から意識の問題に

切り込んだ最初の心理学者である。

 

 

1993年4月号

P16「第3の分子生物学『糖鎖』」

編集部・松尾義之

分子生物学のセントラルドグマ「DNA→RNA→タンパク質」で解決できないさまざまな問題が登場してきた。

タンパク質の先に,さらに「糖鎖」という重要な道筋が残されていることがわかり,遺伝子工学や

医薬品開発など,まさに新しい世代の分子生物学が展開されようとしている。

 

P46「細胞間認識を担う糖鎖」

N.シャロン/H.リス

細胞間認識を担うのはタンパク質だけではない。糖鎖もまた,細胞認識の主要なマーカーであることが

わかってきた。ガンを含むさまざまな病気の予防や治療面で,糖鎖が重要なカギを握っている。

 

P86「高温超伝導体で電気抵抗が発生するメカニズム」

D.J.ビショップ/P.L.ギャンメル/D.A.ヒューズ

高温超伝導体をある条件のもとに置くと,電気抵抗が発生する。これは,内部に侵入した磁束線の

動きに関係があることがわかった。

 

P96「ジンクフィンガーによる遺伝子の発現制御」

D.ローデス/A.クルーグ

ジンクフィンガーは,遺伝子のプロモーター部の塩基を“つかみ”,発現スイッチをオンにする。

1982年ノーベル化学賞受賞のクルーグらが執筆。

 

P108「動く芸術『キネティックアート』」

G.リッキー

複振り子の動きをするように,棒や板や立体をいくつも積み重ねた構造物は,かすかな風が

吹いただけでも軽やかに踊る。

 

P116「血液脳関門を突破する細菌」

E.トゥオマネン

脳内の血管には,脳を病原体や有害物質から守る血液脳関門があるが,ある種の細菌は血液脳関門を

くぐり抜けて,髄膜炎を引き起こす。

 

P124「化学者は何をめざすべきか」

R.ホフマン

化学合成は自然界にない理想の化合物を求めるべきか,自然界にあるものを効率よく作り出す道を

探るべきか。ノーベル賞受賞者が語る。

 

P136「150年目に完成したバベジの計算機」

D.D.スウェイド

チャールズ・バベジの生誕200年を記念して組み立てられた世界初の自動計算機は,当時の機械工学が

優れたものであったことを証明した。

 

 

1993年5月号

P14「ラッティンジャー流体論と共形場の理論–新局面の固体物理学」

川上則雄/簗成吉

通常の3次元固体中の電子系とは性質の異なる1次元電子系を記述する「ラッティンジャー流体」の

基礎が,共形場の理論の手法を使って確立された。

 

P21「高温超伝導とゲージ場の理論–新局面の固体物理学」

久保木一浩

高温超伝導の発現機構を説明しようと理論構築が図られている。とくにゲージ場の手法を使った理論は,

実験事実をよく説明するために有力視されている。

 

P28「量子ホール効果と場の量子論」

石川健三

ホール伝導度が一定の値をとる巨視的な現象「量子ホール効果」が,微視的な場の量子論の手法を使って

厳密に議論され,この物理量が,電子の電荷のような普遍的な量であることが示された。

 

P44「ガンの免疫療法」

T.ブーン

ガン細胞でも表面に特殊な分子がでて,免疫系の攻撃対象になる。このガンの表面抗原の研究は,

ガンの治療につながるはずだ。

 

P58「ブラックホール付近では遠心力が逆転する」

M.A.アブラモビッツ

一般相対論によると,ブラックホールの近くを回る宇宙船の中では「内向きの遠心力」を感じるが,

この奇妙な事実は「光学幾何」で直観的に理解できる。

 

P68「寄生バチはどのようにしてイモムシを探しだすか」

J.H.タムリンソン/W.J.ルイス/L.E.M.ベット

寄生バチはイモムシに卵を産む。イモムシを見つける際には,イモムシが食べている植物が出す

“におい”を手掛かりにしている。

 

P78「米国の橋はなぜ落ちる」

K.F.ダンカー/B.G.ラバット

保守管理の欠落から,米国の高速道路橋のほぼ4割が欠陥をかかえている。問題の橋梁をすべて

架け替えるとすると,10超円もの資金が必要になる。

 

P90「アマゾン浸水林の生態系」

M.グールディング

アマゾンの熱帯雨林には平均して1年のうち半年以上も浸水する林がある。ここでは,ユニークな

適応力をもった動植物が生活している。

 

P100「DNA学の新しい流れ」

J.レニー

染色体の上を自由に渡り歩く遺伝子,父親由来と母親由来のDNAに目印をつけるインプリンティング,

さまざまな突然変異や遺伝病のメカニズムなど,DNAや遺伝子の最新研究は,次々と新しい事実を明らかにしている。

 

 

1993年6月号

P18「アポトーシス–プログラムされた細胞の死」

山田武/刀祢重信(発生過程でのプログラム死)/大山ハルミ(放射線誘発アポトーシス)/小林信之・

中西義信(エイズなどのウイルス感染と細胞死)/木崎治俊・大西芳秋・東祐太郎(アポトーシス機構の

多様性)/田沼靖一(分子生物学的に見たアポトーシス)

生物の体を作り,命を守るために,自ら死んでいく細胞がある。病的に細胞が死ぬのとはまったく

異なり,遺伝子が制御した生理的な死だ。アポトーシスと呼ばれるこの現象は,細胞のガン化とも密接にかかわっている。

 

P60「共振器の中の量子電磁力学

S.ハロシ/J.-M.レイモンド

鏡を向かい合わせにした構造の共振器の中を励起原子が通過すると,そこでの「場」は,原子と光子を

交換したり力を生み出す。

 

P90:「メンフクロウの両耳による聴覚情報処理」

小西正一

左右の耳に達する「時間差」と「音圧差」から音の情報が抽出され,それぞれは,別の脳神経経路を

たどって最終的に「聴空間」へと統合される。

 

P100「分子レベルで見た固体表面の触媒反応」

C.M.フレンド

水素と窒素ガスからのアンモニア合成など,触媒は広く使われているが,表面の解析技術が進み,

その分子レベルのメカニズムがわかってきた。

 

P108「イトヨの多彩な繁殖戦術」

G.J.フィッツジェラルド

この魚の雌は,自分の繁殖を成功させるために別の雌が産んだ卵を食べる。また,雄は雌のような

色になり,他の雄の巣の中の卵に授精する。

 

P116「病原性を進化させる人間の行動」

P.W.エウォルド

人間の行動は,病原体が良性となるか悪性となるかを左右するため,感染症の対策には,病原体の

進化論的考察が有効である。

 

P126「地球規模で進む高齢化」

S.J.オルシャンスキー/B.A.カーニス/C.K.カッスル

人類は自然淘汰の制御によって寿命を伸ばしてきた。今後ますます人口の高齢化が進むため,

これに備える新しい政策が必要になる。

 

 

1993年7月号

P3「自然発生するリズムとパターン」

吉川研一

心臓の拍動や砂丘の模様に似たリズムとパターンが人工的に準備した化学反応溶液で自発的に

再現される。これは原子・分子が集合したシステムで見られる普遍現象である。

 

P32「細胞の知覚と行動を制御する」

上田哲男

細胞内の化学成分はリズミカルに往復流動したり,さまざまなパターンを形成している。これらは

細胞の知覚や行動と密接な関係がある。

 

P40「リズムの相互作用で出現する歩行運動」

編集部

非線形非平衡系のリズム現象を利用したユニークな歩行ロボットが話題を呼んでいる。

 

P44「リズムとパターンの物理」

甲斐昌一

リズムやパターンを含め自然界の複雑な非線形非平衡現象はミクロスケールの現象とマクロスケールの

現象をつなぐ「縮約」という概念で統一的に理解できるようになってきた。

 

P58「人工筋肉をめざすインテリジェント・ゲル」

長田義仁/S.B.ロス=マーフィー

温度,pH,電場といった外界の変化に応じて膨張や収縮をするゲルは,優れた機能性材料に

なりそうだ。医学分野での応用も始まろうとしている。

 

P66「核ーマントル境界領域」

R.ジャンロー/T.レイ

外核の上部とマントル最下部が接するこの領域は,地球の自転や地球地場に直接影響を及ぼしている。

 

P.106「細胞はどのようにストレスに対応するか」

W.J.ウェルチ

細胞は熱や毒などのストレスに遭遇すると,それらストレスによって受ける損傷を修復するために

ストレスタンパク質をつくりだす。

 

P118「地図は何を語っているか」

D.ウッド

現代の世界地図は客観的だと思われているが,中世のキリスト教的世界観を表した地図と同じように,

作製者の主観に基づいた省略や強調がある。

 

P126「不安と恐怖の神経生物学」

N.H.カリン

サルを使った研究から「不安」に関係するのはオピエイト神経系で,「恐怖」に関係するのは

ベンゾジアゼピン神経系であることがわかった。

 

P136「物理の美学を追い求めたディラック」

R.C.ホーヴィス/H.クラフ

理論物理学の巨人の1人ディラックは,実験データと合う複雑な理論より,数学的美しさをもった

理論の方が真実に近いと考えた。

 

 

1993年8月号

P22「人に優しい超並列コンピューター」

川合敏雄

自然現象はどれも同じ基本法則に基づいて起きており超並列コンピューターはこの基本法則を

ありのままに再現できる。これによりプログラミングが不要になり,誰にでも使えるようになる。

 

P27「研究スタイルが変わる」

小柳義夫

量子科学や生命科学,地球環境問題などのあらゆる分野で「グランドチャレンジ問題」と呼ばれる

計算量の莫大な研究対象がコンピューターの高性能化にともなって解く段階に入ってきた。

 

P33「新しい発想の並列プログラミング」

村岡洋一

逐次プログラムを並列プログラムに自動変換する「並列化コンパイラ」と新しい発想の「データ

フロー型並列オブジェクト指向言語」が超並列コンピューターを利用するカギになる。

 

P45「超並列コンピューターとその応用」

鈴木則久

超並列コンピューターは高速ネットワークなどの情報基盤や応用ソフトウエアなどの利用技術を

進展させれば私たちに新しい生活スタイルをもたらしてくれるだろう。

 

P74「地中に残る大気温の記録」

H.N.ポラック/D.S.チャップマン

私たちの足元の地中には,過去の気候変動が「温度の化石」として深さの順に残されている。

高感度の温度計で掘削孔を測ればその歴史がわかる。

 

P84「最も遠い電波銀河」

G.K.ミレー/K.C.チェンバース

宇宙誕生から12億年しか経っていない「若い銀河」が見つかった。中心部に巨大ブラックホールが

あって,強力なエネルギーを放出している。

 

P96「中心体の構造と機能」

D.M.グローバー/C.ゴンザレス/J.W.ラフ

細胞内小器官である中心体は,その周辺物質から微小管を伸ばすことによって,細胞分裂や

形態変化を制御している。

 

P106「ホルモンがプレーリーハタネズミを一夫一妻制にする」

C.S.カーター/L.L.ゲッツ

このネズミは長期間にわたるペアを作り,一緒に仔育てをする。こうした行動にはオキシトシンや

バソプレシンなどのホルモンが関係している。

 

P116「自閉症」

U.フリス

自閉症の人は脳に損傷があり,想像力に欠けたり,言葉の意味を文字通りにとるなどの傾向がある。

また,彼らは他人の心を読むことができない。

 

P126「米国で流行する“優生学”」

J.ホーガン

精神病にかかわる遺伝子,アル中遺伝子,天才遺伝子,同性愛遺伝子,などをめぐって,

行動遺伝学の論争が盛んになっている。

 

 

1993年9月号

P20「転移研究の新しい流れ」

日経サイエンス編集部

サイエンス・ビュー

ガン転移メカニズムの解明と治療。

 

P25「転移の臓器特異性を解き明かす」

熊谷勝男

多数のマウス転移モデルの成功によってガン細胞が発現するサイトカインと接着分子との関連が

わかり,転移の臓器特異性を決める要素が解き明かされようとしている。

 

P30「転移抑制遺伝子nm23の発見」

木村成道

高い転移性を示す乳ガンや肝細胞ガンではいずれもこの遺伝子の発現が抑えられていることから

ガンの悪性度を知る手がかりとして有望視されている。

 

P35「転移と闘う段階的治療」

美甘晋介

現在のところ,転移の確実な予測や予防は困難であるが,いくつもの治療法を組み合わせることに

より,転移を食い止めることが可能になりつつある。

 

P46「南極圏の恐竜」

P.ヴィッカース=リッチ/T.H.リッチ

1億年前に南極圏に位置していたオーストラリア南東部から,様々な恐竜の化石が見つかっている。

彼らは,寒さや冬季の暗さに適応していたらしい。

 

P56「究極の時間測定技術

W.M.イタノ/N.F.ラムゼー

現代の時計は100万年に1秒しかずれないが,人工衛星による位置測定システムや相対性理論を

検証するためには,さらに正確な時計が必要である。

 

P66「ウイルスをとらえる新しい概念『準種』」

M.アイゲン

ウィルスを従来の「種」ではなく,動的な「準種」と考えると,エイズウィルスなどの奇妙な

振る舞いや,新しいワクチン療法の可能性が見えてくる。

 

P92「ファジィ論理」

B.コスコ/井坂暁

ファジィ論理は,明確な情報を処理する二値論理を包含する広い概念で,あいまい情報の処理を

得意とし,家電製品などへの応用が進んでいる。

 

P102「不整脈の外科治療」

A.H.ハーケン

心筋梗塞で死んだ細胞や病的になった細胞が原因となって,心臓の拍動が異常に速くなる不整脈が

起きることがある。著者らは,その外科治療法を確立した。

 

P112「膨張宇宙を証明したハッブル」

D.E.オスターブロック/J.A.Rグウィン/R.S.ブラッシア

古来から宇宙は不変だと考えられてきたが,今世紀の初め,彼は「ハッブルの法則」を導いて

この考えに終止符を打ち,今日の宇宙の膨張観を開いた。

 

 

1993年10月

P20「バーチャルリアリティー最前線」

編集部

バーチャルリアリティーの現状と可能性をさぐる。

 

P22「何が臨場感をもたらすのか」

廣瀬通孝

臨場感は,さまざまな感覚器入力が統合して生じる複雑な感覚である。臨場感を高めるためには,

非常に大きな視野を与え,それが自由に見回せるなど,新しい情報表示技術の開発が不可欠である。

 

P29「力の感覚を通して仮想世界と対話する」

岩田洋夫

力の感覚は人間の能動的な働きと密接不可分な関係にあり,相互作用性の高い感覚である。

この力覚を利用して仮想世界と相互作用すれば,他次元の世界も容易に理解できるようになる。

 

P34「究極の自立性『人工生命』」

下原勝憲

自発的に変化し他と相互作用しあうプログラムを作ったところ,それは,生物界にみられるいろんな

繁殖戦略をとった。人工生命は,やがて人間的な秘書ロボットなどを作り出すだろう。

 

P39「気配のもとを聴覚から探る」

伊福部達

盲人は音によって,障害物の有無・距離・方向だけでなくその素材をも“聞き分けて”いる。

障害物による反射音,遮音,音色の変化などが手掛かりになっているのである。

 

P47「医療へのVRの応用」

二瓶健次

バーチャルリアリティーの医療への応用は,効果が大きいと思われる。実際,長期療養している

子供がバーチャルリアリティーで外部の世界と交流して活気づくなどの成果が上がっている。

 

P58「新しい免疫寛容機構『T細胞アナジー』」

R.H.シュワルツ

免疫担当担当細胞はなぜ自己を攻撃しないのか。その仕組みを説明する,新しい機構が見つかった。

この機構は,自己免疫疾患の治療などにも応用できそうだ。

 

P70「カオスの制御と応用」

W.L.ディトウ/L.M.ペコラ

カオス的に動くシステムを制御できるようになった。カオスを利用すると,レーザー,電気回路,

さらには動物の心臓の鼓動さえ安定化できる。

 

P82「食べ物と霊長類の進化」

K.ミルトン

霊長類は体の割に大きな脳をもっているのが特徴だ。すぐ手に入る葉だけではなく,質の高い果実を

探し求めたことが,この大きな脳に関係しているらしい。

 

P94「光より速く伝わる現象」

R.Y.チャオ/P.G.クウィアト/A.M.スタインバーグ

量子光学の実験から,2つの離れた場所で起こった物理現象が,その間を伝わるどんな信号よりも早く,

互いに影響を及ぼし合うことがわかった。

 

P122「米国の情報スーパーハイウエー事情」

G.スティックス

ゴア米副大統領が力を入れている次世代の通信ネットワーク「情報スーパーハイウエー」をにらみ,

通信・放送・情報の各社が思い思いの戦略を展開している。

 

P134「核弾頭の解体と核拡散防止」

F.フォン・ヒッペル/M.ミラー/H.フェイブソン/A.ディアコフ/F.バークハウト

米国と旧ソ連は現在,大量の核弾頭を解体しているが,取り出した核物質は非核国やテロリストに

渡らないように厳重に処分・管理しなければならない。

 

 

1993年11月号

P16「生命の複雑さを明かす免疫学」

G.V.J.ノッサル

ポリオや天然痘が過去の病気となりつつあることからもわかるように,免疫学は輝かしい成功を

収めてきた。その進歩は,生命の深い理解にも貢献している。

 

P28「免疫系はどのようにして作られるか」

I.L.ワイスマン/M.D.クーパー

免疫系の多彩な細胞群は,すべて骨髄中の「幹細胞」から分化・成熟して作られる。この事実は,

各種の免疫不全症やリンパ系の悪性腫瘍を治療する可能性をひらく。

 

P46「免疫系はどのようにして侵入者を認識するか」

C.A.ジェンウェイ

免疫系の細胞は,未知の外来タンパク質に対応するために,1億種類もの異なる抗体を生み出す

能力をもつだけでなく,感染細胞をキャッチする特別なレセプターを備えている。

 

P58「免疫系はどのようにして自己を認識するか」

P.マラック/J.W.カプラー

T細胞やB細胞が未熟なうちに自己抗原と反応すると死んでしまう。この機構を逃れて成熟した

自己反応性T細胞を不活性化する仕組みもある。

 

P72「感染症と免疫系」

W.E.ポール

細菌やウイルス,病原体など,生態に潜む不法侵入者を追い出すために,免疫系はさまざまな

巧妙な手段を講じる。

 

P116「エイズと免疫系」

W.C.グリーン

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)がT細胞の中で行う複製過程がわかりつつある。各段階を

阻止するような薬の開発が進められている。

 

P128「自己免疫疾患」

L.スタインマン

発病の仕組みがわかってくると同時に,病原体に対する免疫力を低下させることなく,悪さを

しているT細胞だけを抑える治療法が開発されつつある。

 

P140「アレルギーと免疫系」

L.M.リヒテンシュタイン

アレルギーの発症メカニズムは症状の軽微なものから致死的なものまで共通しており,その詳細が

明らかになってきている。

 

P152「免疫系の働きを利用する治療薬」

H.ビグセル

自己免疫疾患や臓器移植時の拒絶反応を抑えたり,エイズやガンや糖尿病を治療するために,

免疫系の働きをうまく制御して利用する薬の開発が進められている。

 

P164「免疫系の果てしない闘い」

A.ミチソン

免疫系は病気をもたらす病原体と闘い続けてきたが,今後は,寄生虫と宿主が共存するような方向に

進化していくだろう。

 

 

1993年12月号

P18「サイエンス・ビュー 世界の基礎科学へ国際貢献」

ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム  (HFSP)

編集部・松尾義之

期待を集めるHFSP/国際HFSP機構/HFSP設立の苦しみ/基本哲学をめぐる論争/HFSPがもたらした

もの/第2のHFSPを/グラント助成者リスト。

 

P46「陸と海に広がる巨大火成岩石区」

M.F.コッフィン/O.エルドホルム

火成岩石区は膨大な溶岩の噴出によって数百万年という短期間につくられた。この爆発的な

イベントは,多くの地球環境異変の引き金になった。

 

P56「タンパク質の進化と移動性ドメイン」

R.F.ドゥーリトル/P.ボルク

多くのタンパク質は,ドメインと呼ばれるいくつかの共通の機能単位をもつ。ドメインは進化の過程で

さまざまなタンパク質に取り込まれたらしい。

 

P78「電場をかけると固まる電気粘性流体」

T.C.ハルセイ/J.E.マーチン

この材料は,外部から電場をかけると液体から固体に連続的に相変化するので,自動車のクラッチや

衝撃吸収装置などの性能向上に役立ちそうだ。

 

P88「水媒花の受粉戦略」

P.A.コックス

水に花粉を運ばせる水媒花は,受粉野効率を高めるために花粉を独特の形にするなどの工夫を

している。

 

P98「失読症を人工ニューラルネットワークで再現」

G.E.ヒントン/D.C.プラウト/T.シャリス

脳の損傷により,単語を読めなくなることがある。人工ニューラルネットワークでこの症状を

再現すれば,脳の情報処理の仕方を解明することができる。

 

P108「トレンド数学 証明は死んだ

J.ホーガン

形式的証明を重んじる数学の伝統が揺らいでいる。コンピューターを利用して得た“実験結果”を

優先する新しい数学が成果を上げ始めた。