日経サイエンス1992年:掲載論文一覧

「日経サイエンス」掲載論文一覧
※各項目は,掲載ページ,論文名,著者名,内容の要約の順に並んでいます。

 

 

 

1992年1月号

P10「『黄金の国』ジパング」

日本は今,史上かつてない金鉱床発見ラッシュにわいている。形成途上の金鉱床も恐山で見つかった。

「黄金の国ジパング」は正夢となりつつある。

中島林彦(平成のゴールドラッシュ)/松久幸敬,J.W.ヘディンクィスト(熱水鉱床の形成モデル)

/井澤英二(菱刈と九州の鉱床)/青木正博(生きている金鉱床「恐山」)。

 

P30「ホタルイカにとっての“三原色”」

鬼頭勇次/清道正嗣/成田欣弥/道之前允直

イカやタコの仲間で初めて,色を感じる3種類の物質がホタルイカの網膜で見つかった。ホタルイカは

色が見えるようだ。

 

P42「リトルバンをめざして」

H.グドブロト/H.シュテッカー

ビッグバン直後や超新星内部など,私たちの周辺とは異なった核物質状態を実現するためには,

重粒子の大型加速器が必要になる。

 

P56「アルツハイマー病とアミロイドタンパク質」

D.J.セルコー

アルツハイマー病の脳では,大脳皮質や海馬など,認知機能に重要な役割をもつ部分に,

アミロイドβタンパク質が過剰に蓄積している。

 

P66「色素を使わないカラー画法」

D.M.ラム/B.W.ロシター

絵画や写真のもとは顔料や染料だが,白黒の写真材料だけを使って,鮮やかなカラー画像を

作り出す方法がある。

 

P74「高集積型マイクロレーザー」

J.L.ジュエル/J.P.ハービソン/A.シェラー

数百万個のレーザーを碁盤の目のように作れるようになり,光多重通信や光並列コンピューターへの

夢が広がってきた。

 

P84「成果をあげる培養皮膚移植」

H.グリーン

ヒトから採取した皮膚細胞を大量に培養し,熱傷などの疾患をもつ患者にそれを移植して表皮を再建

できるようになった。

 

P94「大きく賢くなる光学望遠鏡」

C.S.パウエル

光学望遠鏡の巨大化は限界に達したと考えられていたが,反射鏡の制御技術などにより,従来の

限界は打ち破られつつある。

 

 

1992年2月号

P14「人,動物,森–共存への模索」

編集部・菊池邦子(見直される森林の価値,「活力ある森づくり」への課題)/三浦慎悟・丸橋珠樹

(野生生物との共存は可能か)

森林,野生動物,人間が共存するための新しいパラダイムとは何か。地球環境時代の自然との

接し方を問う。

 

P58「量子宇宙論と宇宙の創成」

J.J.ハリウェル

新しい量子宇宙論によれば,宇宙は“量子ゆらぎ”から誕生し,インフレーションという急激な

膨張期を経て,現在まで進化してきたらしい。

 

P72「培養幹細胞がひらく新しい治療法」

D.W.ゴルディ

免疫を担当する細胞はすべて造血幹細胞からつくられるので,これを体外で培養できれば,ガンや

エイズなどに効く免疫療法が実現するだろう。

 

P80「太陽光でつくる化学燃料」

I.ドストロフスキー

太陽光で化学燃料をつくれば,タンクに詰めて貯蔵したりパイプラインで大都市に輸送できるので,

太陽電池がかかえる問題を解決できる。

 

P88「組織形成を誘導するビタミンC」

畑隆一郎/妹尾春樹

ビタミンCを使うことによって,体外で遊離細胞から3次元の組織を形成できるようになり,

細胞からの臓器再生の可能性も出てきた。

 

P98「米国の人工知能最前線」

P.ウォーリック

1000万もの知識の蓄積をめざす統合化知的システムCycから,推論なしの触覚ロボットまで,

意欲的な人工知能システムが開発中である。

 

P118「卵を温めないヤブツカツクリ」

R.S.セイモア

この愉快なキジの仲間は自分で卵を温めない。枯れ葉や小枝を集めた中に卵を産み,自然の温度で

ふ化させるため,卵も雛も特徴的である。

 

P128「ホームレス・ファミリー」

E.L.バサック

未婚の母親となった女性層を筆頭に,米国ではホームレスが激増している。しかし,連邦政府の

対策は必ずしも十分とはいえない。

 

 

1992年3月号

P18「カオス—科学と技術の“新大陸”」

斎藤信彦(科学に与えたインパクト)/合原一幸(ひろがる工学への応用)/西江弘(生命現象を説明する

カオス)/D.スミス(ホームメイド・カオスのすすめ)

カオス理論は,科学の決定論と確率論を統合するとともに,生命現象などの複雑な系の解明を通して,

技術の壮大な“新大陸”を開拓しつつある。

 

P44「量子カオス」

M.C.グッツヴィラー

波のような滑らかな性質が支配する量子論の世界でも,不規則運動の象徴ともいうべきカオスが

存在しているように見える。

 

P60「CO2の増加が植物に与える影響」

F.A.バザーズ/E.D.ファジャー

光合成の原料となる大気中のCO2が増えたとしても,植物が単純に炭素固定量を増やすとは

考えにくいことがわかった。

 

P92「連星系にできる降着円盤」

J.K.カニゾー/R.H.カイチャック

降着円盤は宇宙のいたるところに見られるが,連星系の観測から「円盤の不安定モデル」が提唱され,

その振る舞いが明らかになってきた。

 

P102「グルコースはどのようにして細胞に取り込まれるか」

G.E.リーンハルト/J.W.スロット/D.E.ジェームズ/M.M.ミュックラー

グルコースの吸収には「グルコース輸送体」の助けが必要だが,ある種の輸送体は,細胞膜に穴を

あけるという方法で,グルコースを取り込む。

 

P112「寄生関係が進化と性を生んだ」

J.レニー

寄生生物は,他の生物にとって迷惑な存在と考えられがちだが,生物の進化や性は,寄生生物なしには

起こりえなかった。

 

P130「最初のRNA誕生の道すじ」

柳川弘志

「最初の生命はRNAである」という説には異論もあるが,最新の知識をもとにすれば,RNAは生物の

助けを借りずに生成できる。

 

P140「新大陸で部族間の戦いを助長したヨーロッパ人」

R.B.ファーガソン

コロンブスの新大陸発見は,現地の部族間にあった社会的バランスを打ち壊し,部族間同士の

無差別戦争を引き起こすきっかけとなった。

 

 

1992年4月号

P15「主要研究所のCOE度」

編集部・豊川博圭

「技術一流,研究環境二流」の日本にもセンター・オブ・エクセレンスをめざす研究所が登場してきた。

厳しい評価と組織の活性化がCOEの条件だ。

 

P36「ギガビット・メモリーを可能にする現像液」

松崎秀夫

マイクロリソグラフィーの精度を妨げている原因が現像液にあることが判明した。超クリーンな

現像液は,線幅1/4μmを射程距離内に入れた。

 

P48「ガン転移のメカニズムと阻止物質」

L.A.リオッタ

ガンの転移にはメタロプロテイナーゼという酵素が深くかかわっている。この酵素の阻害剤は

転移阻止薬として使えそうだ。

 

P62「レーザーによる中性粒子のトラップ」

S.チュー

この新技術は,絶対零度付近までの気体の冷却,従来より1000倍も高精度の原子時計,DNAや分子を

つかむ“光ピンセット”などに応用されだした。

 

P76「化石にみるヨーロッパ新生代の哺乳類」

G.ストルク

ドイツ・フランクフルトから20km離れたメッセルからは,ヨーロッパが亜熱帯の島だった5000万年前の

見事な哺乳類化石が豊富に産出する。

 

P84「マリアナ海溝の“泥火山”」

P.フライヤー

マリアナ海溝のすぐ西側に,泥でできた冷たい海底火山群が発見された。プレートから放出される

流体が,この火山の生成に関与しているらしい。

 

P94「イデオロギーに翻弄された遺伝学者ティモフェーエフ」

D.B.ポール/C.B.クリンバス

このロシア生まれの遺伝学者は,若くしてドイツに渡り,ナチス時代に大きな業績をあげたため,

ソ連国家に対する反逆罪に問われてしまった。

 

P104「HDTV放送にこぎつけた欧州連合」

E.コーコラン

高品位テレビで先行する日本に対抗し,欧州は一丸となって独自規格を開発,1992年のアルベールビル

冬季オリンピックで試験放送にこぎつけた。

 

 

1992年5月号

P14「閉鎖環境系から地球の物質循環を探る」

新田慶治(陸上閉鎖系バイオスフェアJ)/渡辺正孝(海に作った閉鎖生態実験系)/森田恒幸

(疑似閉鎖系の環境経済学)

地球環境を正確に把握するために,閉鎖生態実験系を作る試みが始まった。同じ発想は,社会科学の

分野でも登場している。

 

P34「イオンチャンネル1つを調べるパッチクランプ法」

E.ネーヤー/B.サックマン

直径1μmのガラス電極でイオンチャンネルの機能を調べることができる。この研究により,

著者たちは1991年ノーベル医学生理学賞を受賞した。

 

P44「宇宙の巨大構造の謎を解くテクスチャー理論」

D.N.スパーゲル/N.G.トゥロック

銀河や銀河団は一様ではなく密集して分布しているが,これは,宇宙初期の相転移で生じた

位相欠陥のところに物質が生まれたためらしい。

 

P60「クモの糸のかくれた能力」

F.ボールラス

水に弱いはずのクモの糸を,ニワオニグモはわざわざ濡れやすくする。しかもその糸には,

糸自動巻き上げ機まで内蔵されている。

 

P90「赤外線ビデオカメラ」

J.シルバーマン/J.M.ムーニー/F.D.シェパード

この技術は対象物の出す熱をとらえて画像化するため,夜間の監視,高熱環境の可視化,

医療診断などに広く使われている。

 

P98「重力波をつかまえろ」

R.ルーセン

連星ブラックホールなどからやってくる重力波をとらえる装置の建設予算案が米国議会を通過し,

いよいよ重力波天文学がスタートした。

 

P110「初段をめざすコンピューター将棋」

飯田弘之/小谷善行

将棋プログラムが初段への道を歩み始めた。将棋はチェスより複雑なゲームであり,その

プログラムは,よりソフト的になる。

 

P118「ポーランドの市場経済建設」

J.サックス

経済改革は一応うまく行っているが,今後の進展は,大企業の私企業化の成否と西側ヨーロッパ諸国の

援助にかかっている。

 

 

1992年6月号

P16「一般相対論と量子力学を統合する『超弦理論』」

編集部・松尾義之

現代物理学の二本柱である量子力学と一般相対性理論が「超弦理論」によって統合されつつあり,

21世紀の新しい物理学が姿を見せはじめた。

 

P38「アフリカ単一発生説—論争『現代人はどこからきたか』」

A.C.ウイルソン/R.L.キャン

ミトコンドリアDNAの解析から現生人類の起源をたどると,わずか20万年前のアフリカの1人の女性に

到達する。

 

P48「多地域進化説—論争『現代人はどこからきたか』」

A.G.ソーン/M.H.ウォルポフ

世界に散らばる人類集団は,それぞれが現在の居住地域で進化したと考えられる。多くの化石の証拠が

それを物語っている。

 

P56「国際熱核融合実験炉ITER」

R.W.コン/V.A.チュヤノフ/井上信幸/D.R.スウィートマン

日米欧とCISが共同で建設する史上最大のトカマク核融合実験炉ITERは,商業発電炉に向けて

大きな一歩になる。

 

P94「スーパー抗原」

H.M.ジョンソン/J.K.ラッセル/C.H.ポンツァー

T細胞は通常は特定の抗原のみに反応するが,スーパー抗原はこの特異性を無視して多量の

T細胞を刺激し,免疫系に壊滅的な打撃を与える。

 

P104「幻肢」

R.メルザック

手足を失った人は,いまなお手足が実在するように感じる。本物の手足のあるなしにかかわらず,

脳はそうした感覚を作り出すらしい。

 

P128「熱バンク仮説による温暖化予測」

綿抜邦彦/木曽文彦

海は巨大な熱容量をもっている。地球表面を熱バンクと考えると,マクロ気候モデルの解析処理から

温暖化の時間遅れが予測できる。

 

P138「データベース化に悩むヒトゲノム計画」

D.エリクソン

ヒトのゲノムの情報量はあまりにも大きいため,その情報をどのように蓄積していくかが課題に

なっている。

 

 

1992年7月号

P14「ロシアの科学界–その現実と声」

編集部・福田夏樹

政治的,経済的混乱の中で,ロシアの科学界はどうなっているのだろうか。モスクワと

ノボシビルスクの合計16の研究所を訪ね,実態をさぐった。

 

P38「輝く晩年の星『惑星状星雲』」

N.ソーカー

質量が太陽くらいの星は,進化の終わりころ,周囲に放出したガスを光り輝かせて惑星状星雲になる。

この星は宇宙の距離を知る“ものさし”となる。

 

P48「生理活性物質としての一酸化窒素NO」

S.H.シュナイダー/D.S.ブレット

一酸化窒素といえば公害物質というイメージしかないが,実は,免疫,血管吸収,神経伝達など

生体内で重要な役割を果たしていることがわかってきた。

 

P62「リズムを自然発生させる非平衡の化学」

吉川研一

膜が自発的に振動したり,ばらばらに鼓動する心筋細胞をくっつけると振動がそろうなどの現象は,

普遍的な科学現象であることが突き止められた。

 

P74「盲点」

V.S.ラマチャンドラン

盲点を利用した数々の実験から,視覚系が行っている情報処理の順序や仕組み,さらには脳内の

神経構造が浮かび上がってくる。

 

P82「第3世代のレンズ–バイナリーオプティクス」

W.B.フェルトカンプ/T.J.マッキュー

微細加工技術を使って1万個のレンズのアレイなどが作れる新しい光学技術が登場し,機械による

視覚認識や知的センサーなどへの可能性がひらけた。

 

P90「アメリカで小鳥たちが減っている」

J.ターボー

北アメリカの小鳥,とくに米国を繁殖地にしている渡り鳥の減少は深刻で,ある都市の公園では,

数が50年前の10分の1になってしまった。

 

P100「エイズ流行の数学モデル」

R.M.アンダーソン/R.M.メイ

エイズが発症するメカニズムをきれいに説明する数学モデルは,エイズの流行についても

有用な情報を提供してくれる。

 

 

1992年8月号

P14「ハッブル望遠鏡が見た宇宙」

E.J.チェイスン

ハッブル宇宙望遠鏡は,反射面の欠陥を補正しながら,木星の詳しい写真を撮ったり,銀河の

微細構造を明らかにするなどの成果をあげつつある。

 

P24「実用化迫る遺伝子組み換え作物」

C.S.ギャッサー/R.T.フレイリー

作物の遺伝子組み換え技術が大きく進歩した。その結果,病原菌や害虫に強く,味も日持ちも

よくなった「人工作物」が市場に出回ろうとしている。

 

P32「動脈硬化とリポタンパク質(a)」

R.M.ローン

コレステロールの輸送にかかわる特異なタンパク質が,動脈硬化や心筋梗塞のリスクを高めて

いることがわかってきた。

 

P46「ちょっと気になる全国大学研究者」

編集部・稲田成行/松尾義之/豊川博圭

全国の至るところで独創的な研究が展開されている。各地の大学で活躍する研究者に焦点を当て,

そのユニークな成果や研究姿勢を紹介する。

 

P92「シングル・エレクトロニクス素子」

K.K.リカレフ/T.クラーソン

電子を1個1個制御することが可能になり,電流を100万分の1の精度で測定できる装置や究極の

エレクトロニクス素子も夢ではなくなった。

 

P102「脳機能の解明に向かうPET」

井上修/須原哲也/舘野之男

脳のさまざまな機能発現に,神経伝達物質が重要な役割を担っている。PETによって生きた脳の活動が

次第に明らかになってきた。

 

P112「自然資源を経済評価する」

R.レペト

現在の経済指標では,砂漠化などの環境劣化が反映されない。その結果,とくに開発途上国で,

生産基盤である自然資源が減少しつつある。

 

P120「研究部門の改革を始めた米国企業」

E.コーコラン

日本企業が基礎研究にシフトする一方で,IBM,ベルコア,ゼロックスの米企業3社は,市場重視型の

研究開発に力を入れ始めている。

 

 

1992年9月号

P12「日本のヒトゲノム解析計画」

松原謙一(日本のゲノム計画の現状と展望)/井川洋二(自動化システムと遺伝子の機能解析)/

中村祐輔(医学的観点に立ったヒトゲノム計画の重要性)/五條堀孝(ヒトゲノム計画と

DNAデータベース)/D.エリクソン(進む遺伝子治療)/遅塚忠躬(ヒトゲノム解析計画と生命倫理)/

鳥井弘之・原孝二(ヒト遺伝子特許申請の波紋)。

 

P37「分子性結晶を組み立てる」

P.J.ファガン/M.D.ウォード

既知の分子から希望通りの結晶構造を作り,目的の機能を発揮させる–この化学の夢の実現に向け,

分子性結晶の分野で研究が進んできた。

 

P46「Gタンパク質」

M.E.リンダー/A.G.ギルマン

血管などを通して細胞に達するファーストメッセンジャーと,細胞内の情報を伝達するセカンド

メッセンジャーとを,Gタンパク質が媒介している。

 

P56「遺伝的アルゴリズム」

J.H.ホランド

プログラムを遺伝子と見なし,役に立つ機能を表現する形質を生物のように自然選択的に

進化させていく新手法が,複雑なシステムの設計に使われだした。

 

P78「カエルたちの多彩な繁殖戦略」

W.E.デュエルマン

カエルの中には,卵から直接カエルが生まれるもの,母親が子ガエルを産むもの,母親の胃の中で

オタマジャクシ時代をすごすものなどがいる。

 

P110「病気がわかる呼気検査」

M.フィリップス

肺で血液とガス交換をした呼気の中には,病気を診断するための貴重な情報が入っている。

最近の呼気検査は,消化器疾患や肺ガンを検出できる。

 

P118「常識に挑戦する量子力学実験」

J.ホーガン

物質は波でもあり粒子でもあるという量子の世界の“異常さ”を,巨視的な世界で現出させようという

試みがなされている。

 

 

1992年10月号

P14「太陽系最後の謎『小惑星』」

吉川真(小惑星の分布と運動)/輿石肇(地球直撃の可能性と影響)

地球軌道と交わらない軌道上にある小惑星が,木星重力の影響を受けて地球に接近してくることが

ある。地球に衝突した時の被害は,核戦争さえ上回る。

 

P28「太陽の輪が消えた」

磯部秀三(秀の字は王辺)

太陽にも土星のような輪がある。しかし,前回の皆既日食時にはこれが消えていた。太陽の輪は,

太陽磁場の影響で消長するようだ。

 

P38「キラウエア火山噴火のメカニズム」

J.J.ドゥボラック/C.ジョンソン/R.I.ティリング

キラウエアは世界で最もよく研究されている火山であり,そこで得られた知識は,他の火山の

噴火予知などに利用できる。

 

P56「免疫系を活性化する毒素エンドトキシン」

E.T.リーチェル/H.ブラーデ

バクテリアがもつエンドトキシンは,深刻な病気をもたらす一方で,マクロファージに刺激を

与えて免疫系を活性化するという有益な働きがある。

 

P78「定常宇宙論が破れた日」

S.G.ブラッシュ

宇宙に始まりがあるとするビッグバン理論と,宇宙には始まりも終わりもないとする定常理論が激突,

定常理論は背景放射の発見により破れた。

 

P88「アリのような社会をもつハダカデバネズミ」

P.W.シャーマン/J.U.M.ジャービス/S.H.ブラウディ

砂漠にすむこの動物は,アリやミツバチと同じように,“女王”と繁殖能力をもたない“労働階級”

からなる唯一の哺乳動物である。

 

P98「よみがえる化石人」

I.タッターソル

アメリカ自然史博物館で,ネアンデルタール人やアウストラロピテクスの復元に取り組んだ科学者や

アーティストの仕事を紹介する。

 

P108「米国のマグレブは浮上するか」

G.スティックス

磁気浮上車マグレブの営業運転に向けて,日独に水をあけられていた米国が研究開発に乗り出した。

だが,その推進を巡って消極的な意見が噴出している。

 

 

1992年11月号

P12「脳と心」

G.D.フィッシュバック

人間の脳は宇宙で最も複雑なものだが,脳研究の進展によって,心の一部である意識や記憶などを

生み出している生物的基盤が明らかになりつつある。

 

P26「脳の発生過程」

C.J.シャッツ

ヒトの脳には1000億ものニューロンがある。ニューロン同士が適切な相手と結合して脳が完成する

ためには,外界からの刺激とニューロンの自発的な興奮が必要である。

 

P38「脳と視覚」

S.ゼキ

視覚野を構成する5つの領野は,個別に形や色などを専門処理するとともに,ネットワークを構成して

各処理結果を統合し,知覚と理解を生み出している。

 

P50「ニューロンレベルでみた学習」

E.R.カンデル/R.D.ホーキンス

学習によって脳のニューロン間の結合強度は変化する。この単純な組み合わせの集合体が私たちの

記憶であり,1人1人の個性を作っているらしい。

 

P62「脳と言語」

A.R.ダマジオ/H.ダマジオ

脳での言語処理には「単語・文章生成系」「概念系」と,2つをつなぐ「媒介系」の3つの機構が

かかわっている。それぞれの働きや場所が細かくわかってきた。

 

P72「ワーキングメモリー」

P.S.ゴールドマン-ラキッチ

ワーキングメモリーは“心の黒板”とも呼ばれる。これがあるからこそ,人は頭の中で物事を

考えたり,脳に蓄えてある知識を引き出して利用することができる。

 

P82「脳の性差」

D.キムラ

生後の早期に性ホルモンが働くことにより,男女の脳機構の形成に違いが生じることがわかってきた。

物事に対する男女の認知の差はここからスタートしている。

 

P114「心の病気と脳」

E.S.ガーション/R.O.リーダー

精神分裂病や躁鬱病は,遺伝的因子に環境因子が作用することで発病するらしい。しかし,

その原因となる遺伝子はまだ発見されていない。

 

P136「脳の老化と心の老化」

D.J.セルコー

老化によってニューロンは変性したり消滅したりするが,こうした脳の老化が,私たちが恐れる

“心の老化”すなわち知性の低下に結びつくことはない。

 

P146「内部表現を獲得する人工ニューラルネット」

G.E.ヒントン

脳の神経回路網をまねた計算機上のニューラルネットは,外界情報の中から核となる特徴を

ネットワーク内部に自力で獲得し,これを使って外界を再現できる。

 

P158「意識とは何か」

F.クリック/C.コッホ

意識の問題はつかまえどころがなく,とても手がつけられなかったが,視覚の研究を通して,

ようやく議論できる段階になった。

 

 

1992年12月号

P13「ソリトンとは何か?」

和達三樹

ソリトン理論の発展は,非線形問題への橋頭堡を築き,数学と理論物理学が混然一体となって,

新しい自然観をもたらそうとしている。

 

P19「自然界のソリトン」

児玉裕治

地震による津波,海底石油掘削用プラットフォームを脅かす内部密度波,木星の大赤斑など,

自然界にはソリトンの例がいくつもある。

 

P28「光ソリトン通信」

長谷川晃

1973年に理論的に提案された光ソリトン通信は,ファイバー光増幅器などの技術的発展に支えられ,

次世代通信の最有力候補となった。

 

P40「地球上には何種類の生物がいるのか」

R.M.メイ

その数は多くて3000万種と推定されるが,正確なところは不明である。多様性の保全や進化の研究の

ために,この数を明らかにすることが重要である。

 

P50「量子暗号」

G.H.ベネット/G.ブラザード/A.K.エカート

微弱な偏光を伝送する装置と公衆回線を組み合わせれば,量子力学の不確定性原理によって盗聴を

見破ることができるため,完璧に秘密交信ができる。

 

P92「高山病」

C.S.ハウストン

登山家の敵,高山病。ちょっとした注意を守ることによって,この死に至る可能性を秘めた病気に

かからないですむ。著者は高山病研究の第一人者。

 

P100「遺伝子の発現を調節するヒストン」

M.グランスタイン

DNAを収納するための“糸巻き”と考えられてきたヒストンが,遺伝子発現の抑制や活性化にかかわる

機能をもつことがわかってきた。

 

P112「歌うイモムシとアリの共生」

P.J.デブリーズ

ある種のチョウの幼虫は“歌”でアリを呼び寄せ,自分の用心棒にする。両者の関係を調べると,

共生関係進化した道筋をたどることができる。

 

P122「ダイヤモンド半導体」

M.W.ガイス/J.C.アンガス

ダイヤモンドの薄膜が低圧下で手軽に合成できるようになった。この薄膜を使った半導体素子は,

現在のシリコン半導体素子より優れた特性をもつ。