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気泡で水中騒音をカット〜日経サイエンス2011年11月号より

海生生物を守る防音壁が登場

 

 海中の騒音が劇的に大きくなっている。商船の往来のほか,石油やガスの探査など海中活動が増えたせいだ。これらの音源からの低周波音がイカやタコのデリケートな内臓を破壊してしまうことを示す証拠が増えている。
海の生物を守る一策として,音源または保護したい領域の周囲に硬くて重い防音壁を作る方法があるが,おそらく費用が高くつく。これに対し,音響の専門家たちは防音壁の代わりに気泡を使える可能性があるとみて,音波を吸収・反射する“空気のカーテン”を試す実験を始めている。

水中風船で防音壁
 低周波音は波長が長いので,これを吸収・反射するには直径10cm以上の大きな気泡が必要になる。だが,水中を自由に浮上している気泡(家庭にある熱帯魚飼育水槽のエアーポンプから出ているような泡)の場合,10cm以上の大きな気泡は自然に壊れて小さな泡になってしまう。そこで,気泡を大きなまま維持するため,薄いゴムで泡を包み,それらを風船のようにひもでつなぐ。この“風船気泡”の壁を実験室の水槽に入れて実験したところ,44デシベルの遮音効果があった。賑やかな大通りと図書館のなかほどの違いだ。
 この結果はシアトルで最近開かれた米国音響学会においてテキサス大学オースティン校のウォクナー(Mark S. Wochner)らによって発表された。ウォクナーらは次にテキサス州のとある湖の遊覧船の周囲で,そしてゆくゆくは大型の海洋船舶や沖合の風力発電基地で,ゴム製の泡の効果を実験する計画だ。
 だが,気泡だけではこの問題を完全には解決できないだろう。水上からやってくる音を遮ることはできても,ノイズの10%は水中のくい打ちから発生するもので,海底から伝わってくるこれらの音は遮断されないと,ワシントン大学(シアトル)の音響学者ダール(Peter Dahl)はいう。ダールらはそうした音も遮音できる方法を見つけるため,下から伝わってくる音の特性を解析している。

ほかにも話題満載! 日経サイエンス2011年11月号

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