News Scan

発見相次ぐ巨大津波の痕跡〜日経サイエンス2011年11月号より

国の想定を大きく超える過去の津波の証拠をどう生かすのか

 

 

 内閣府は8月28日,南海トラフ沿いで発生が想定される東海・東南海・南海の3連動地震について検討する「南海トラフの巨大地震モデル検討会」(座長・阿部勝征東京大学名誉教授)の初会合を開いた。想定される震源域や地震の大きさ,津波の高さなどを見積もるのが狙いで,来年春に中間報告を出す。会合後に記者会見した阿部座長は「どんな科学的根拠があるかがポイント。津波堆積物の調査などが重みを増すのではないか」と話した。
 この検討会では16人の委員の中に「津波堆積物」の専門家3人が参加した。北海道大学の平川一臣特任教授(名誉教授)と高知大学の岡村真教授,そして産業技術総合研究所活断層・地震研究センターの岡村行信センター長だ。この分野の研究者が複数,政府の審議会の委員に選ばれることは珍しく,過去最大級の地震を探るうえで津波堆積物を重視している姿勢がうかがえる。
 津波で運ばれた砂やプランクトンなどは地面に堆積する。海岸近くの地層を掘って,海にしかいない微生物の化石が入っていたり,海砂が堆積していたりすれば,津波の痕跡だとわかる。過去に起きた地震について,内陸では地表で見られる活断層が手がかりになるが,海溝で起きるプレート境界型地震だと痕跡は深い海の底なので簡単には調べられない。古文書に残っていない過去の巨大津波を探るには堆積物が唯一の手がかりといえる。

 

今年に入って“新証拠”続々

 津波堆積物の研究が始まってから25年たつが,今年に入り,国の想定を大きく超える津波が太平洋沿岸を襲っていたことが相次いで公表されている(左ページ下の地図)。特に,検討会に名を連ねる北大の平川特任教授と高知大の岡村教授の成果は衝撃的だ。
 平川特任教授は北海道南部,渡島半島に位置する森町の海岸沿いの崖で津波堆積物を見つけた。地層中の火山灰を指標にすると,上から17世紀初頭,12〜13世紀,紀元前後の3つの層で,いずれも海面から5mを超す場所にあり,津波はこれよりも高かったとみられる。2000年ころには北海道十勝地方の崖で津波堆積物を調査し,道東地方の太平洋沿岸を300〜500年おきに,高さ10mを超す巨大津波が繰り返し襲ったことを突き止めている。十勝沖から根室沖にかけての震源が同時に動く連動型地震が発生した可能性が高いとしている。(続く)

続きは日経サイエンス2011年11月号でどうぞ!

サイト内の関連記事を読む