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漂流物を捕捉する〜日経サイエンス2020年11月号より

漂流物を引き寄せる水域を特定して行方不明者を見つけるアルゴリズム

 

船が沈没したり海上で行方不明になると,捜索救難隊は生存者を捜す海域をコンピューターモデルを用いて決めることが多い。現在使われているモデルは人工衛星と沖合いのセンサーからデータを取り込み,漂流物の経路を予測して,それらを発見できる可能性が最も高い海域を地図上に示す。最初の捜索で見つからなかった場合は,その情報をモデルに取り込んで予測を更新する。

 

最近ある数学者チームが,漂流物の3時間後までの位置を予測する新たなアルゴリズムを開発した。行方不明者の漂流経路をモデル化するのではなく,海流と波の作用によって近くの漂流物が引き寄せられるTRAPという水域を特定する〔TRAPはtransient attracting profiles(過渡的誘引プロファイル)の頭字語〕。これまで隠されていたこうした“誘引水域”が将来の捜索救難活動の初動に組み込まれ,人命救助の決め手になるかもしれない。

 


MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY

速度場に基づいて誘引水域を予測

海水の動きは数学的には「速度場」として表現できる。この場合なら,海面の各点における水流の速さと向きを記述する場だ。5月のNature Communications誌に報告された新アルゴリズムは,海の波のデータとこの速度場の予測モデルを用いて,浮遊物を引き寄せる力が最も強い海域を見つける。それぞれのTRAPは目視では判別できないが,長さ100mから1000mほどの曲線として地図上に描くことができる。海面の状態が変化するにつれ,TRAPはゆっくり移動し,漂流物を引きずっていく。テーブルの下で磁石を動かすとテーブル上にある鉄製品が引きずられて動くのと似ている。

 

ハーバード大学のセラ(Mattia Serra)が率いる研究チームは,マサチューセッツ州マーサズ・ヴィニヤード島のすぐ南で大荒れの海に数体のマネキン人形を投げ入れ,この手法を実地試験した。各マネキンは異なる経路をたどったが,アルゴリズムの予測通り「すべて同じTRAPに集まった」とセラはいう。これらの初期テストは海岸近くで行われたが,外洋にもTRAPが存在することが同じ数理モデルから予測されている。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年11月号誌面でどうぞ。

 

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