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星が生まれる場所の謎に挑む〜日経サイエンス2020年11月号より

野辺山とアルマの連携プレー

 

立松健一
①はオリオン座と冬の大三角。
②と③は野辺山の電波望遠鏡で観測した原始星誕生直前と直後のN2H+ 強度分布図。
④と⑤はアルマ電波望遠鏡で観測した原始星誕生直前と直後のN2D+ 強度分布図。
⑤の赤い星印は原始星の位置を示し,その両側に「謎の2つ目玉」が見られる。

星々は宇宙空間で分子ガスが集まる「分子雲」で生まれる。国立天文台野辺山宇宙電波観測所(長野県)の立松健一所長と金観正研究員をはじめとする国際研究グループは,星がまさに誕生しようとする現場を探し出し「もうすぐ星が生まれる場所」の目録を作った。さらに南米チリにあるアルマ望遠鏡で詳しく調べ,星の誕生プロセスの謎に迫る観測に成功した。

 

宇宙空間の分子雲の中でも特に密度が濃いところは「分子雲コア」と呼ばれる。分子雲コアの中心部が自らの重力によって収縮していき,「原始星」と呼ばれる「星の赤ちゃん」が生まれると考えられている。しかしすべての分子雲コアから原始星が生まれるとは限らない。またどの分子雲コアからもうすぐ星が誕生しそうかを特定するのは困難だった。

 

立松所長らは重水素に注目し,野辺山の45m電波望遠鏡を使って星の誕生の場を探し出した。重水素を含む分子は分子雲コアで星の誕生が近づくにつれ増えていき,星が生まれると減少することが知られている。立松所長らは,重水素を含んだ様々な分子の中から,窒素分子と重水素イオンが結合した分子イオン(N2D)と,重水素と窒素と炭素がこの順番で直線的に結合した分子(DNC)の2つを選んで,オリオン座の巨大な分子雲にある分子雲コアを1つ1つ観測した。

 

地球から約1300光年離れたオリオン座分子雲は多数の星が誕生している場所として知られている。立松所長らは45m電波望遠鏡で分子雲の中に113個の分子雲コアを確認。このうちすでに星が誕生しているものが74個,星がないものが39個あることがわかった。39個の星がないコアのうち,重水素の観測から,「もうすぐ星が生まれそう」と判断した場所が8個あった。研究グループはその中から1個を選んで,アルマ望遠鏡のアタカマコンパクトアレイ(ACA)で詳しく観測。分子雲コアの中心部にガスが落ち込む様子をとらえた。ACAは日本が建設を担った16台のアンテナで,設計・建設に携わった天文学者,故森田耕一郎氏にちなみ「森田アレイ」とも呼ばれている。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年11月号誌面でどうぞ。

 

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