中高生が学ぶ サイエンス講義

セコムが機械学習を講義 〜聖光学院生、AIの未来を考える

 聖光学院中学校高等学校(横浜市)で2019年9月、人工知能(AI)の現在と未来を考える特別講義が開かれた。セコムIS研究所の佐藤昌宏研究員が講師となり、AIの中核技術である「機械学習」の仕組みや可能性を解説。受講した生徒からは「AIに人の仕事が奪われるのか」「人間がAIより優れているところは何か」などの質問が相次ぎ、白熱した授業となった。

 セコムは防犯カメラの画像などから侵入者や異常を検知する技術にAIを活用している。佐藤氏は画像認識のAIが専門。「現在実用化しているのは画像認識や音声認識など人間の特定の能力を実現する『特化型AI』」と説明し、画像認識を例に特化型AIが画像データの特徴を学習・認識する仕組みを解説した。また、現在のAIブームのきっかけでもあり、より難易度の高い認識が可能となる「深層学習」も解説した。こうした仕組みを実現するために高校の数学で習うベクトルや微分積分、確率統計の重要性についても言及した。

AIの価値は人間の特定の能力のサポート
 授業の後半では、機械学習の課題として、事前に集めたデータにこだわりすぎて未知のデータを認識する際に誤ってしまう“過学習”の危険性を指摘。AIが未知データも正しく判定できるよう“汎化性”を高めるには、「バランスや広い視野が必要」とし、「機械学習は人生に通じる。ぜひ様々なことに興味を持ってください」と語った。

 AI自らが能力を獲得し、何でもできるようになる「万能型AI」は実現するのかとの質問に佐藤氏は、現実世界において関連する事象を限定することの難しさを示す「フレーム問題」を挙げ、「現在の特化型AIでは、人間が適切に関連する範囲を限ることでこの問題に対応している。従って、今の技術の延長では難しいと考える」と回答。AIの価値は「人間の能力を増幅すること。一人一人のできることがAIとの連携で広がり、質の高い仕事が可能になる」との未来像を示した。  ■

(日経サイエンス2020年1月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時

 
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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社