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ライダーで蚊を監視〜日経サイエンス2020年10月号より

自然環境で蚊の動きを追跡,マラリア抑制に利用も

 

2016年の日食の際,スウェーデンのルンド大学の研究者が率いるチームが薄暗くなったタンザニアの空に向けて赤外線レーザー光を投射し,時ならぬ夕暮れに対して昆虫がどう反応しているかを計測した。同チームはその後の4日・5夜にわたって計測を続けた。彼らが用いたライダー(電波の代わりにレーザーを使ったレーダー)に基づくシステムは,この期間中に30万匹を超える昆虫を検出した。

 

その多くは世界で最も致死的な昆虫だった。毎年世界で50万人に及ぶ死者を出しているマラリアの原因となる寄生虫を媒介するタイプの蚊だ。これらの蚊が大量に飛行する朝夕の“ラッシュアワー”を調べたところ,毎日ほぼ同じ時刻に飛行数が増えていることが計測された。また,日食の際にも蚊の大群が出現した。この結果は自然界の蚊の活動が概日リズムではなく光量によって決まっていることをうかがわせる。重要なことに,この研究はマラリアのリスクと予防法の評価,昆虫学データの収集にライダーが役立つ可能性も示している。5月のScience Advances誌に発表された。

 

「自然環境の野原を飛び回っている様々なタイプの昆虫をその場で分類できることを示したのは今回が初めてだ」と論文の筆頭著者となったルンド大学の物理学者ブリデガード(Mikkel Brydegaard)はいう。

 

昆虫の種別と数を特定

今回の研究で用いた昆虫ライダーはブリデガードが開発したもので,世界中で利用されている。ライダーのビームのなかを飛ぶ昆虫はそれぞれが光を反射するので,この後方散乱光を望遠鏡でとらえて解析すると羽ばたきの頻度がわかり,これをもとにビームを通過している昆虫の数と種を特定できる。同チームは今回,蚊と蛾,ハエ,ユスリカを特定できたほか,蚊の雌雄まで区別することができた。

 

マラリアと戦う科学者は物理的な捕集装置を使って様々な成長段階にある蚊を捕まえたうえ,実験室でそれらとその遺伝子を解析することが多い。だがこの方法は時間と費用がかかるうえ,長期間にわたる個体数の評価は不可能だ。殺虫剤散布などの防除処置の効果を実地評価することもできない。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年10月号誌面でどうぞ。

 

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