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赤色の研究〜日経サイエンス2020年10月号より

有機物に富む赤い石筍は過去の環境を記録している

 

スペイン北部ビルバオにあるカラフルで有名な建築からそう遠くないところに,鮮やかな色彩を誇る地下世界がある。ゴイコエチェ洞窟の石筍と鍾乳石は通常の白色だけではない。蜂蜜色から深紅まで色とりどりだ。これらの「洞窟内生成物」は土壌から浸出して水で運ばれてきた有機化合物によって赤い色がつくことが最近の研究で示された。なのでゴイコエチェ洞窟の洞窟内生成物は降雨などの環境条件を記録していると考えられるという。4月のQuaternary International誌電子版に発表された。

 

アタプエルカ研究グループとUCM-ISCIII人類進化行動研究センター(マドリード)に所属する古気候学者のマルティネス=ピラド(Virginia Martínez-Pillado)はゴイコエチェ洞窟のなかをときには腹ばいになって進み,サラ・ロハ(「赤い部屋」の意)にたどり着いた。「周囲のすべてが赤い」と,石筍と鍾乳石で覆われたこの部屋について彼女はいう。マルティネス=ピラドは共同研究者とともに,洞窟の床から伸びた4本の石筍を採取して研究室に持ち帰った。そして内部に含まれる微量成分を分析し,赤色のもとになることが多い酸化鉄(火星が赤いのは酸化鉄による)が原因である可能性を排除した。

 

植物が分解した有機分子

赤い色合いは有機物による場合もあるので,研究チームは次に石筍の分子構成をチェックした。この洞窟内生成物がどの波長の光を散乱・吸収するかを計測した結果,フミン酸とフルボ酸が含まれていることがわかった。これらの複雑な有機分子は植物が微生物によって分解されて生じる。研究チームはこれらが水によって運ばれ,石筍が何千年もかけて成長する間にそこに沈積したに違いないと結論づけた。

 

したがって,石筍は過去の環境条件を示している可能性がある。例えば降雨量の変化は洞窟に流入した有機物の量に影響を与えると,この研究には加わっていない豪カーティン大学のブリス(Alison Blyth)はいう。「石筍の各層に保存されている化学シグナルを計測すれば,様々な環境パラメーターが長い年月の間にどう変化してきたかを再構築できる」。

マルティネス=ピラドらは現在,石筍を分析してゴイコエチェ洞窟上の大昔の降雨と植生の変化を追跡している。同研究チームによると,この手法は有機物に富む生成物がある他の洞窟にも適用できる。■

 

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