中高生が学ぶ サイエンス講義

花王、科学の力を語る 〜川越女子高生、人工皮膚を体験

 埼玉県立川越女子高等学校(川越市)で「リケジョに託す冒険の科学」と題した特別講義が2019年10月に開かれた。花王の研究開発部門を統括する長谷部佳宏代表取締役専務執行役員が教壇に立ち、界面化学を基盤とする同社の最新技術や、環境問題の解決に役立つ研究の醍醐味などを幅広く紹介。「科学には世界を変える力がある」と約80人の同校生に語りかけた。

 花王は2019年で創業132年。長谷部氏は、約10年前に研究開発の目的を、顧客の利益に加えて世界に広がる困難にも立ち向かうことに転換したと説明した。2018年には研究成果を広く公開し、他社などと開発を進めるオープンイノベーションを始めた。

協業で大きなことを達成
講義ではその成果として最初に肌の美容などに役立つ人工皮膚を紹介。「ファインファイバー」と名付けた極細繊維を皮膚に積層して被膜にする技術だ。繊維を細くしたらどんな性質を示すかと疑問を抱いた研究者らが10年以上かけて開発しパナソニックの協力で商品化を実現した。長谷部氏が自分の頰に付けていた人工皮膚をはがすと「わからなかった」と驚きの声。生徒たちも手に積層して人工皮膚を体験した。

 講義では髪や頭皮へのダメージが少なくシャンプーだけで髪色を簡単に変えられる新しいヘアカラー技術、皮脂に含まれるRNAから肌や健康の状態を調べる研究も紹介した。鮮やかな発色の髪用カラーリング技術は富士フイルムとの長年の共同研究で実現。「協業によって大きなことが成し遂げられる」と述べた。環境分野では再資源化率100%を目指す新しいフィルム容器の開発や、コンクリートを水中で固める技術を使って東京電力福島第一原子力発電所の汚染水対策などに取り組んでいることも説明した。

 長谷部氏は「研究者たちは科学を使った自らの仕事が社会貢献につながることを感じて喜んでいる。皆さんも科学の力で社会を変えるイノベーターになってほしい」とエールを送った。■

(日経サイエンス2020年2月号に掲載)
※所属・肩書きは掲載当時

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協力:日経サイエンス 日本経済新聞社