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水質検査を容易に〜日経サイエンス2020年8月号より

重金属を吸着する安くて簡単な器具

 

水道水は電子機器廃棄物などに含まれる重金属によって汚染されている場合がある。だが,サンプルを集めて化学的に保存し,検査ラボに送って分析するのは,遠隔地の地域社会にとってはなかなか難しい。

 

この手順を簡素化するため,マサチューセッツ工科大学の機械工学者ハンハウザー(Emily Hanhauser)らは2ドル足らずで作れるローテクのサンプル収集器具を作製した。プラスチック製の柄の先にプロペラのような網目状構造が装着されており,重金属イオンを引きつける吸着剤樹脂ビーズの小さな包みがついている。利用者はこの器具を水に入れてかき回してから,水気を拭き取るか自然乾燥させる。後に装着部分を酸性溶液に浸すと吸着されたイオンが放出され,測定が可能になる。

 

汚染の可能性がある試料が有害物質とみなされるのとは違って,この器具は検査施設に安全に郵送できる。また,器具を2年間保管した後でも結果を出せるという。実験では様々な水のサンプルに添加した銅とニッケル,鉛,カドミウムの量を正確に反映していた。3月のEnvironmental Science & Technology誌に報告。

 

水質を詳しく分析するにはサンプル採取地の近くで作業を行い,試料の輸送を完全になくすのが理想的だろうとハンハウザーはいう。だがそうした目的に設計された既存の分析ツールは少量の汚染物質は測定できないうえ,測定値のばらつきが大きくて役に立たないことが多いという。今回の器具は遠隔地の地域社会や井戸のオーナー(米国では井戸水の水質検査は所有者の責任)に,大量の液体試料を長距離輸送するのに代わる現実的な手段を提供できるだろう。改良を加えれば汚染金属の凝集塊も測定できる可能性があると研究チームはいう。

 

「安く,金属回収率が高く,単なる有無テストよりも優れているので,有効なツールになると思う」と,ミシガン州フリントの水道水鉛汚染問題を調べているバージニア工科大学の環境工学者ロイ(Siddhartha Roy)は評価する。「特定金属による今後の汚染問題でこの器具の高性能版が使われることになると思う」。◼️

 

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