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家禽になり損ねたキジ〜日経サイエンス2020年8月号より

かつてはニワトリのライバルだったようだ

 

ニワトリは地球上の鳥のうちで圧倒的に数が多く,約230億羽もいる。だが最近の研究は,後に世界が好む家禽となる鳥の候補がかつては別にあったことを示唆している。中国で発見された古代の鳥の骨が,これまで長らく推定されていた最初に家畜化されたニワトリのものではなく,実はキジの骨であることが判明した。この研究は野生のキジがかつて人間の近くで一緒に生息していたことも示しており,家畜化の初期過程に光を当てている。

 


Lars Karlsson

「例えばシカが狩猟採集民と一緒に暮らしていた証拠が見つかったら異例だろう」と環境コンサルティング会社デューデック(本社カリフォルニア州)の考古学者バートン(Loukas Barton)はいう。「だが今回の事例は野生動物が人間の生活圏で生息していたことを示している」。彼は2月のScientific Reports誌に報告されたこの研究論文の筆頭著者だ。

 

ほとんどの考古学者がニワトリの家畜化を示す最古の証拠と考えていた試料は,中国北部にある8000年前の遺跡でブタやイヌの骨や農具とともに見つかった鳥の骨だ。だがニワトリの祖先となった野生種セキショクヤケイはもともと東南アジアが原産であり,そこから1500km以上も離れた場所にそれがなぜ急に現れたのか,多くの研究者が不思議に思った。そして2015年,この骨が中国北部に自生するキジのものである可能性が提唱された。

 

新石器時代,人と暮らしていたキジ

バートンらは決定的な答えを得るため,中国北西部・甘粛省の7500年前(新石器時代)の大地湾遺跡で見つかった8つの鳥の骨を調べた。以前はニワトリの骨と同定されていたものだが,オクラホマ大学の研究者がミトコンドリアゲノムの配列解析など2種類の方法を用いて調べた結果,キジのものであることが遺伝学的に確認された。

 

生化学検査から,これらのキジは主に人間が栽培していた雑穀を食べていたことがわかり,年間を通じて人のそばで暮らしていたことが示唆された。これは家畜化の第一歩で,初期のニワトリの家畜化によく似ているとバートンはいう。つまり野鳥が人間と密接な関係を持ち始め,ついには長く続く相互依存的な関係になる。ただし本当の家畜化は人為的な選抜による身体的または遺伝的な変化を伴うのに対し,この古代のキジのゲノムは現代のキジと一致している。なので厳密には,これらのキジはまだ“野鳥”のままだ。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年8月号誌面でどうぞ。

 

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