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窒素を埋め込んだナノチューブ〜日経サイエンス2020年8月号より

東大,半導体素子として可能性

 

窒素ドープ型ナノチューブ分子の分子構造。

青い部分が窒素原子。(結晶構造を横から見た図)

/磯部寛之

 

東京大学の磯部寛之教授らは,窒素原子を埋め込んだカーボンナノチューブの合成に成功した。電子を受け取りやすくなる性質がナノチューブに加わり,半導体素子としての実用化が見込めるという。窒素を埋め込む位置や量は制御可能。窒素以外の原子も埋め込むことができ,新材料の開発が相次ぐ可能性がある。

 

カーボンナノチューブは炭素原子が筒状の構造をとった物質で,1991年に名城大学の飯島澄男終身教授らが発見した。軽くて強度に優れるうえ,電導性も高く,次世代の半導体材料として期待されている。炭素以外の物質を組み込むと化学的な性質が変えられるので,有用な新材料を合成しようと,世界で研究が活発になった。

 

磯部教授らは2019年,芳香族カップリング反応を応用してベンゼンをつなげ,ナノチューブを合成。今回は合成に使うベンゼンに,同じ環状構造を持ち窒素を含むピリジンを少量混ぜ,ナノチューブを構成する304個の炭素原子のうち8個を窒素原子に置き換えることに成功した。

 

ナノチューブの化学的な性質は埋め込む原子の量や位置によっても変わる。磯部教授らの合成法ならばこれらも自由自在に制御できるため,さらなる新材料を開発できる可能性がある。

 

ナノチューブに埋め込む元素は窒素に限らない。環状構造の分子に含まれている原子ならば基本的にどんなものでも可能という。例えばリンや硫黄,ホウ素なども埋め込むことができ,実際に合成したものも発表する予定だ。

 

磯部教授らは今後,新材料の探索と並行して,窒素を含むナノチューブの半導体材料としての実用化を企業などと共同で検討する。磯部教授らの手法は均一なナノチューブを作ることができるうえ,不純物も少ないため,量産化するのに有利という。薄膜型素子や,分子に電極を取り付けた単分子素子としての実用化を考えている。■

 

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