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デルタ地帯の行方〜日経サイエンス2020年7月号より

過去数十年で拡大したが…

 

地球の河川にできるデルタ(三角州)には昔から重要な港や湿地がある。海面上昇にもかかわらず,経済的にも生態学的にも重要なこれらのデルタがここ数十年で全体として拡大していることがわかった。ただし,この傾向は長続きしないとみられる。

 


NASA

オランダのユトレヒト大学の地球科学者ニーホイス(Jaap Nienhuis)らは,衛星画像と世界各地の現地調査のデータから1万1000カ所近い河川デルタを特定した。そして潮汐や波,川の上流での人間活動などが1985~2015年の間に各デルタの大きさと形にどう影響したかをコンピューターシミュレーションを用いて推定した。南米大陸の東岸沿いやアジア大陸の東岸・南岸・南東岸の流域の多くでは,森林伐採のせいで河川が運ぶ堆積物が増し,その結果としてデルタの面積が増えたことがわかった。一方,北米では多くのデルタを育てるのに必要とされる堆積物の量がダムによって減った。

 

対象期間中に海面は約10cm上昇したが,河川デルタは全体で毎年約54 km2ずつ広がったと,研究チームは1月のNature誌に報告した。ただし,この拡大は短期的な現象にすぎない可能性が高いという。テュレーン大学の湿地生態学者キーオ(Molly Keogh,この研究には加わっていない)はこの見方に同意し,海面は21世紀末までに約60cm上昇すると予測されていると指摘する。加えて,デルタの堆積物は時とともに自重で締め固まることが知られている。

 

キーオがいうこの“ダブルパンチ”により,世界中の河川デルタは今後数十年で全体的に縮小するだろう。海抜が低いところにある社会基盤や漁場が失われるだけでなく,人口集積地や農業地域が水没する恐れがある。■

 

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