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脳内の寄生虫〜日経サイエンス2020年7月号より

カナヘビの胚に侵入者発見

 

フェイナー(Nathalie Feiner)はフランスのピレネー山地で採集したトカゲの胚の脳のなかで小さな線虫がうごめいているのを見つけたとき,ただの偶然だと思った。彼女はある研究のために数百匹のイワカナヘビの胚を解剖していたのだが,この侵入者と出くわしたのは初めてだった。だがその後,孵化前のこの爬虫類の脳に線虫が見つかる例が増えていった。

 


Mircea Nita

当時英オックスフォード大学にいたフェイナーは興味を覚え,同僚とともにこの胚の親を調べた。すると,線虫がいた胚の母親の卵巣だけに線虫が見つかった。この寄生虫が,それまで不可能だと考えられていた仕方で母から子に移動したことを示唆している。

 

線虫などの寄生虫は宿主のなかでは増殖せず,哺乳類の胎盤や母乳を介して母から子に伝わることが多い。だが鳥類や爬虫類の場合,発達中の胚の周囲に形成される卵殻がそうした侵入を阻む壁になっていると考えられていた。爬虫類の卵に寄生虫が感染した例が観察されたことはなかったとフェイナーはいう。「私たちはこれらの線虫が進化させたまったく新しいライフスタイルを偶然に発見したと思われる」。

 

卵殻が防護壁になるとは限らないかも

フェイナーらは去る12月にAmerican Naturalist誌に受理された論文で,メスのイワカナヘビ85匹が6カ所で産んだ720個の卵を調べ,胚に線虫が見られるのがピレネーで採集した最初の個体群のみだったことを報告した。感染したメスから寄生虫が胚に移行した割合は50~76.9%だった。

 

DNA解析の結果,これらの線虫はこのトカゲの腸内で見つかる線虫に似ていることがわかった(ただしサイズはずっと小さい)。この線虫は腸内にいる種から進化したのだろうという。

 

従来の研究は主に鳥とカメの寄生虫を調べていたので卵への感染の可能性を見落としていたのだろうとフェイナーはいう。鳥やカメでは受精後すぐに卵殻が形成され,この段階の胚はわずかな細胞の塊にすぎないので,小さすぎて宿主にならない。だがトカゲやヘビで卵殻が形成されるのは胚がもっと大きくなってからなので,寄生虫が感染してもおかしくない。ポルトガルにある生物多様性・遺伝資源研究センターのハリス(James Harris,今回の研究には加わっていない)は,同チームの仮説が正しい場合,この形態の感染はもっと広く見られる可能性があるという。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年7月号誌面でどうぞ。

 

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