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海底のニュートリノ望遠鏡〜日経サイエンス2020年6月号より

地中海に展開するKM3NeTは遠い星の爆発や暗黒物質などを探る

 

フランスとイタリアの沖合,地中海の海底近くにサッカーボール大のガラス球126個がすでに浮遊し,海水そのものを検出器の一部に利用して,暗黒物質や超新星,中性子星の衝突で生じるシグナルを探っている。これらは「KM3NeT(立方キロメートル・ニュートリノ望遠鏡)」というプロジェクトで設置される大量の球体の第一弾だ。

 

探索対象のニュートリノは電荷を持たず質量がほとんどない基本粒子だ。「通常の宇宙線と違って銀河間空間の磁場によって運動方向を曲げられることがないので,宇宙の情報を運んでくる比類のないメッセンジャーになる」とドイツ電子シンクロトロン研究センター(DESY)のニュートリノ天文学者ヴィンター(Walter Winter,この計画には関与していない)はいう。「ニュートリノは電磁放射や重力波といった他の情報源を補う役割を担う」。

 

1立方キロの水域に検出器を分散配置

ニュートリノは他の物質とほんのわずかに相互作用するだけで,ほとんど素通りする。この幽霊のような振る舞いのため,天文学観測の理想的な対象になっている。KM3NeTは最終的に2カ所合わせて1km3(オリンピック級プール40万個に相当)の水域に分散配置され,周囲の海水を巨大なレンズとして利用する。6000個を超える球体のそれぞれが光電子増倍管という高感度検出器を31個内蔵する。海底に固定したケーブルの端にブイをつけてピンと張り,これら多数のケーブルに球体を取りつける。

 


KM3NeT

「100万個のニュートリノのうちおそらく1個か2個は海水を構成する水素あるいは酸素の原子核内にあるクォークと相互作用を起こすだろう」と同プロジェクトの物理学・ソフトウエア担当責任者を務める仏マルセイユ素粒子物理学センターのコイル(Paschal Coyle)はいう。「宇宙ニュートリノは非常に高いエネルギーを持っているので,そうした相互作用の結果として超高速で移動する荷電粒子が放出される」。

 

実際,水中における光速を超えるスピードで移動するので,超音速ジェット機が生む衝撃波の光版にあたる影響が生じるとコイルはいう。こうして放出されたかすかな光(いわゆるチェレンコフ放射)を海底センサーで検知することで,もとになったニュートリノのエネルギーと運動方向を特定できる。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年6月号誌面でどうぞ。

 

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