News Scan

ウイルスを検出するDNAの罠〜日経サイエンス2020年6月号より

正確で簡単な検査が可能に

 

デングウイルスを捕まえる罠(わな)が作られた。DNA断片を組み合わせた星形の骨組みのような構造物で,血流中のデングウイルスを探し出して正確にくっつくように作られている。蚊が媒介するこの病原体を検出する強力だが簡便な検査ツールになる。

 

デング熱は世界で最も急速に広がっている蚊媒介性感染症で,2019年に重大なアウトブレイクが何度も起こった。重症になると内出血が起こり,死亡することもある。広く認められたワクチンも的確な治療法もないため,正確な早期発見が重要だ。

 

デングウイルスは表面に分散している抗原という特定のタンパク質を使って感染先の細胞をひっつかむ。研究チームはこれらの抗原に結合する骨組みをDNAで組み立てた(濃い青色)。ウイルスに結合すると骨組みが光る。

Illustration by Tami Tolpa

抗原の配置を反映した骨組み
デングウイルスの球状の表面には抗原が散在している。抗原はウイルスが感染相手の細胞に付着するために使う特別なタンパク質だ。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の生化学者ワン(Xing Wang)が率いる研究チームはDNAナノテクを用いて,デングウイルスの半球表面の抗原の配置を反映した柔軟な骨組みを作った。5つの突端を持つこの“星形DNA”の頂点は抗原と位置的パターンが一致しており,そこに抗原がつかむ分子を配置してある。複数の結合点があるので,デングウイルスと強く,そして非常に正確に結びつくという。この星形DNAが結合するのは,抗原の配置がその特定パターンと同じウイルスだけだ。星形DNAがウイルスに結合すると蛍光を発し,ウイルスの存在を知らせる。

 

「これはDNAナノテクが現実の問題解決に役立つことを示す素晴らしい例だ」とマサチューセッツ大学アマースト校で核酸化学研究グループを率いるイウ(Mingxu You,この研究には加わっていない)はいう。「現在のデングウイルス検出技術と比べ,このDNAプローブは感度と簡易性が大幅に優れている」。

 

デング熱の検査法として現在最も望ましいとされる方法は高度な検査装置と訓練を必要としている。これに対しワンは,「私たちの方法は非常にシンプルだ。1回の検査が1~2分ですみ,費用は50セントしかかからない」という。彼らは1月のNature Chemistry誌に発表した論文で,今回の方法が現在の臨床検査法と比較して感度と正確さの両方に優れることを示している。症状が表れる前にデングウイルスを検出可能なほか,このDNAナノ構造は毒性がなくヒトの組織に優しいという。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年6月号誌面でどうぞ。

 

サイト内の関連記事を読む