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群れの相転移〜日経サイエンス2020年4月号より

ある種の鳥の群れは混乱と秩序を切り替えている

 

ニシコクマルガラスには群れを作る規則が2通りあり,それらを切り替えることで違う結果を生じていることが,最近の研究で発見された。冬にねぐらに向かって飛ぶ際の群れは,どんなに数が多くても秩序を守っている。一方,捕食者をかわすために群れた場合は,数が少ない当初はバラバラだが,十分な数が集まると突如として秩序ある状態に切り替わる。

 

遊泳する細菌や行進するバッタ,群れをなす魚や鳥はすべて,結合ユニットとして機能している。この現象は同じ規則に従う個体が集まったときに生じうると,英エクセター大学で認知の進化を研究しているソーントン(Alex Thornton)はいう。「集団行動をこのように物理現象としてとらえることにあまりに慣れていたので,動物が実際には環境や目的の違いによって規則を使い分けている可能性があるという考え方は実に新鮮でエキサイティングだ」。彼が共著した新研究の論文は昨年11月のNature Communications誌に掲載された。

 

 
「移動群れ」と「モビング群れ」

同研究チームは英国の南西端に位置するコーンウォールで野生のニシコクマルガラスの群れを撮影した。4台の高速度カメラを同期させ,それぞれの個体の位置と飛行の軌跡を図に描いた。

 

記録された16の群れのうち6つは,冬の夕方にねぐらに戻る「移動群れ」だった。これらの場合,群れの大きさにかかわらず,それぞれのコクマルガラスが近くにいる一定数の個体に合わせるように軌道を調整し,常に秩序を維持した。

 

研究チームは捕食者に集団で対抗する「モビング群れ」を作るため,羽ばたきする鳥の模型をくわえた剥製(はくせい)のキツネをコクマルガラスの集団に見せるとともに,この鳥が捕食者を追い払うべく仲間を呼び集める際に使っている警戒声(アラームコール)の録音を流した。この状況のコクマルガラスは一定距離内にいるすべての鳥を追跡する形で飛行の進路を決めた。

 

「この捕食者・モビング規則の場合,カオスから秩序が生じる」とソーントンはいう。「最初のうちの小さな群れは無秩序だが,仲間が呼び集められて群れの密度が一定レベルに達すると,突如として秩序が現れる。気体が液体に相転移するのに似て,フェーズが変わる」。こうした転移が鳥で観察されたのは初めてだという。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年4月号誌面でどうぞ。

 

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