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植物の免疫反応, 試験管で再現〜日経サイエンス2020年4月号より

動物と全く異なる免疫メカニズム研究進展のカギに

 

動物と同じく,植物も病原体から身を守る免疫の仕組みを持つことが知られている。ただし,その免疫反応は動物とは異なる。体内に病原体が侵入すると,植物は様々な抗菌物質を作ったり,侵入部位の細胞だけを殺して病原体を封じ込めたりする。

 


植物免疫を調べるための発光計測装置(右)

こうした植物の免疫反応を試験管内で部分的に再現する実験手法の開発に,東京理科大学の朽津和幸教授らの研究チームが成功した。培養細胞を使い,複数の病原体や化学物質に対する免疫反応の変化を一度に調べることが可能になる。研究チームは,植物の免疫機能を高めて作物を病気に強くする農薬の開発などを効率的に進められるとみている。

 

ヒトの感染症は細菌やウイルスによるものが多いが,植物では菌類などの真核生物が起こす病気が多い。同じ真核生物の中で菌類だけを殺し,植物やヒトを含む動物には無害な薬剤を開発するのは抗生物質の開発よりも一般的に難易度が高い。そこで近年注目されているのが,植物の免疫機能を外から働かせる手法だ。

 

ただ,植物の免疫反応の仕組みは未解明の点が多い。候補となる膨大な数の薬剤をひとつひとつ作物にかけて免疫反応を確認するのは時間と手間がかかり,開発が進みにくい課題がある。このため,現在実用化されているものは数種類にとどまっている。

 

東京理科大の研究チームが開発した新手法はこうした課題の解決につながる。96個の穴がある手のひら大のプレートへタバコの培養細胞を入れ,病原体のタンパク質と農薬の候補物質を混ぜる。そのまま数時間培養してからそれぞれの穴で発生した活性酸素の量を調べることで,免疫反応がどの程度活発に起きたかを調べる。

 

研究チームはこれまでに,免疫反応が活発になると植物細胞で作られる活性酸素の量が増えることを突き止めており,この知見を新手法に生かした。1つの穴で他よりも活性酸素が増えていれば,この薬剤が植物の免疫反応を強く引き起こしたとわかる。免疫反応を起こした細胞で活発に働く遺伝子の種類を調べれば,薬剤が具体的に植物細胞へどのような影響を与えたかを知ることも可能だ。

 

研究チームは実際にこの手法を使い,1万1000種類の薬剤候補から植物の免疫反応を誘導する3つの薬剤を絞り込んだ。モデル植物のシロイヌナズナにこれらの薬剤をかけたところ,免疫反応に関わる遺伝子を活性化するジャスモン酸と呼ぶ物質の量が通常の数百倍まで増えることも確かめた。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年4月号誌面でどうぞ。

 

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