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ザトウムシが明かす古代の氷河〜日経サイエンス2020年3月号より

クモに似たこの動物の分布は最終氷期の地図作りに役立つ

 


Bruce Marlin

洞窟にすむザトウムシという蛛形類動物が現在生息している場所は,最終氷期の直近のピークである約2万2000年前の氷河の南限に対応していることが,最新の研究で示された。「ザトウムシの分布を見るだけで最終氷期最盛期の状況を再現できる可能性がある」と,研究にあたったイタリア学術研究会議・水研究所の生態学者マンモーラ(Stefano Mammola)はいう。昨年8月のJournal of Zoological Systematics and Evolutionary Research誌に報告。

 

「あしながおじさん」とも呼ばれるザトウムシはクモと間違えられることが多い。大きなハサミを持ついくつかの種は,ピレネー山脈からアルプス山脈,バルカン半島にかけた細長い地域の低温で湿った洞窟に生息している。マンモーラのチームはこの生息範囲を,地質学者が作った最終氷期の氷河範囲のモデルと比較し,わずかな違いを除き氷河の南限とほぼぴったり一致することを見いだした。

 

ちょうどよい温度の洞窟に

洞窟が氷河に覆われるとザトウムシは生き残れなかっただろうが,氷河の端から遠く離れた暖かな気温にも耐えられなかったのだろうという(その後,洞窟の温度は徐々に上がったが,この変化はゆっくりだったのでザトウムシは適応できたとマンモーラはみる)。「寒冷だが氷に完全には覆われていないバランスの取れた洞窟が存在したのだ」とマンモーラは指摘する。「いま見えているのは,ザトウムシの古代の大きな分布域の影だ」。

 

この研究には加わっていないがザトウムシを研究しているメリーランド大学ボルティモアカウンティ校の生物学者バーンズ(Mercedes Burns)は,この蛛形類の現在の分布が大昔の生息域とほぼ一致していると考えるのは妥当だという。「これらの種の存在から地理的な長期変化を追跡するというアイデアは優れている。ザトウムシは一生の間にあまり移動せず,何世代かかってもそう移動しないので,よい指標となるからだ」。さらに,一部の植物種が同様に古代の地形を反映していることが示されていると付け加える。

 

ザトウムシその他の蛛形類動物など洞窟に生息する生物種の分布地図は,古気候の研究に追加の手がかりを与えることになるとマンモーラはいう。■

 

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