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新材料で作る量子ビット〜日経サイエンス2020年3月号より

逆向きの電流が重なる超電導リングで

 


超電導体は電子をある場所から別の場所へ電気抵抗ゼロでよどみなく導く物質だ。ほとんどの超電導体は電流の向きが1方向のみだが,新発見の物質は同時に逆方向にも流すことができる。

 

この物質β-Bi2Pdはビスマスとパラジウムの薄膜結晶だ。リング状に成型すると,電流を時計回りと反時計回りに同時に循環させるという型破りの能力を発揮する。これを開発したチームは,この物質が次世代の量子コンピューターを構築するうえで一定の役割を担う可能性があるという。

 

ジョンズ・ホプキンズ大学の物理学者で研究論文の筆頭著者となったリー(Yufan Li)は,この物質は「時計回りの電流と反時計回りの電流の重ね合わせ」により,量子コンピューターの基本構成要素である量子ビットとして振る舞うだろうという。古典的コンピューターが扱うビットが「1」「0」の2つの状態のいずれか一方で存在するのに対し,量子ビットは両方の状態の重ね合わせで存在できる(生きていると同時に死んでもいる有名な「シュレーディンガーの猫」のようなもの)。このため量子ビットは古典ビットよりもはるかに多くの情報を保持でき,より優れた演算能力を実現できるとされている。

 

磁場なしでOK,ノイズに強い量子ビットも

これまでに作られた超電導量子ビットが機能するには,高精度に制御された磁場が必要だ。これに対しリーのチームが設計したβ-Bi2Pdリング(「超電導磁束量子ビット」と呼ばれる)は外部の磁石がなくても電流を両方向に循環させることができる。この特性は既存の量子ビット技術に対する「直接の改善」になりうると研究チームはいう。「私たちの事例では量子ビットが磁場なしで機能しており,これは回路の設計と較正を大幅に簡素化できる可能性を意味している」とリーはいう。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年3月号誌面でどうぞ。

 

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