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巻貝と戦う単性エビ軍団〜日経サイエンス2020年2月号より

住血吸虫を媒介する巻貝の防除にエビの“スーパーメス”を動員

 

世界で毎年数百万人が罹患する住血吸虫症は死に至ることもある感染症だ。これを防ぐため,女性だけの軍隊が動員されようとしている。

 

オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)は「この病気の原因である寄生虫を媒介している巻貝を貪り食う捕食者だ」と,この研究を率いているネゲブ・ベングリオン大学(イスラエル)の生物学者サギ(Amir Sagi)はいう。「繁殖しないモノセックスの個体群を作り出せば,侵入種になることはなく,生物防除剤として使える可能性がある」。

 


Citron

住血吸虫を運ぶ巻貝の防除に甲殻類を利用する考え方は以前からあるが,性別が雌雄のどちらかにすべてそろって繁殖できない相当数の個体群を作り出すのは困難だった。

 

エビも人間と同様,性別を決める性染色体を子に伝える。だが人間と違い,メスのエビは雌染色体と雄染色体を1つずつ,オスのエビは雄染色体を2つ持っている。2つの雌染色体を持つ“スーパーメス”を実験室で作り出せば,そこから生まれる子はメスだけになるので,交配できない個体群を生み出すのに極めて有用だ。

 

スーパーメスを効果的に増やす

スーパーメスを作る現在の方法は効率がよくない。そこでサギらはオスの造雄腺の細胞をスーパーメスに移植することでスーパーメスの体をオスの体に転換した。オスの体ながら雄染色体を完全に欠損したオニテナガエビはこれが初めてだ。これらのエビが次世代に伝えるのは雌染色体だけになるので,生まれてくる新世代はスーパーメスになりやすくなる。この方法の詳細は去る8月のScientific Reports誌に報告された。

 

メスだけからなるエビ個体群は特に役に立つ。「メスのエビはオスよりもおとなしく,あまり共食いしない」と,関連研究をサギと共同で行ったスタンフォード大学の疾病生態学者で獣医のソコロフ(Susanne Sokolow)はいう。「成長が均一で,収穫量も安定するだろう」。つまり,巻貝を防除するとともに地元で食料としても利用できる可能性がある。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年2月号誌面でどうぞ。

 

 

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