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羽根の罠〜日経サイエンス2020年1月号より

ブラジルのオオズアリは落とし穴で虫を捕まえる

 

羽根が落ちていても特に危険を感じないが,ブラジルの熱帯サバンナにいる虫は落ちている羽根にうっかり近づいてはいけない。フェイドル・オキシオプス(Pheidole oxyops)というオオズアリ属のアリが地中の巣につながる入り口の周囲に疑似餌として羽根を置き,近づいた生き物を巣に引きずり込んでいることが新たな研究で示された。積極的に獲物を狩るのではなく疑似餌や罠(わな)を使う行動は,アリとしては珍しい。

 

ヴィソーサ連邦大学(ブラジル)の生態学者ゴメス(Inácio Gomes)は最初に市街地の公園で,次いで大学のキャンパスで,アリの巣の入り口の周りに羽根があることに気づいた。彼は罠を仕掛けるアリを報告した科学文献を見たことはなかったが,改めて調べると2つの仮説が見つかった。羽根は乾燥した地域で朝露を集めるためのものであるという説と,疑似餌として置かれているという説だった。

 

ゴメスらはこれらの説を実験的に検証し,その結果を去る8月のEcological Entomology誌に報告した。彼らが湿った綿の玉を置いてもアリは羽根を集めたので,水を集めるために使われているのではないと考えられる。さらに,周囲に羽根を置いた罠と羽根のない罠を作って比較したところ,羽根のある罠のほうが多くの節足動物を捕らえた。

 

オオズアリの罠にダニやトビムシ,他種のアリなどの獲物が落ちると,巣穴の入り口が軟らかいのでよじ登って脱出するのは難しく,巣の主の餌食となるのだとゴメスはいう。

 

ハーバード大学の生物学者マクレリー(Helen McCreery)は,この研究は「実に素晴らしい」と評する。「カリスマ的な驚くべき行動だ。巣を離れずに餌を得るアリの例は非常にまれだ」。

 

そもそもなぜ獲物が羽根に引きつけられるのか,マクレリーはいぶかっている。ゴメスは羽根の匂いと形に引きつけられるのだろうとみる。「土壌昆虫は一般に好奇心がとても旺盛だ。落とし穴型の罠が非常に有効な理由もそこにある」とゴメスはいう。科学者は野生の標本を採集するのに同様の罠を使っている。

 

フェイドル・オキシオプスは単独で食物を探すこともあれば,他の種と同じように集団で狩りをすることもあるが(ゴメスはこのアリがカマキリを解体しているのを見たことがある),獲物の乏しい長い乾期を切り抜けるために羽根の罠で狩りを補っているのだろうとゴメスはいう。■

 

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