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てんかん発作を予測〜日経サイエンス2020年1月号より

血中の分子を調べると数時間前に警告を出せる

 

世界で5000万人を超える人がてんかんを患っている。この病気の最も厄介な点のひとつは,発作を予測できないことだ。発作がいつ起こるのか,患者にはほとんどわからない。

 

だがアイルランド王立外科医学院の研究機関であるフューチャーニューロの分子生物学者ホッグ(Marion Hogg)らは,てんかん発作の前後で血中濃度が変わる分子を発見した。この発見は発作の時期を予測する血液検査につながる可能性があり,患者は予測に応じて即効性の予防薬を服用できるようになるかもしれない。てんかんの原因に関する手がかりが得られる可能性もある。この研究は去る7月のJournal of Clinical Investigation誌に報告された。

 

転移RNA断片の変動

研究チームは,てんかん患者の血液から得た血漿を分析して,特定の転移RNA(tRNA:RNAからタンパク質への翻訳に関与する分子)の断片の量が発作の数時間前に急上昇し,後に通常レベルに戻ることを見いだした。これらの断片は酵素がtRNAを切断することで生まれ,発作の前段階として脳の活動が高まることによって生じるストレスが酵素反応の引き金になっている可能性がある。

 

豪メルボルンにあるセントビンセント病院の神経学者クック(Mark Cook,この研究には加わっていない)は,このtRNAの変動は生物時計のリズムを反映している可能性があるという。「成人の慢性てんかん患者では,発作に7日,28日,40日の周期が見られる」とクックはいう。「これらのパターンが脳の興奮性をコントロールしており,発作の起こりやすさに関係している」。

 

だから今回の新発見は,最終的にてんかんの原因のさらなる理解につながる可能性があるだろう。「何がこの周期を生み出しているのかはまだ不明だが,今回の発見が手がかりになるだろう。システムを動かしている複数の遺伝子があり,それによって発作を予測するこれらのtRNA断片が生じている」とクックはいう。「てんかんだけでなく脳の機能についても何かがわかる可能性があるわけで,これは非常にエキサイティングだ」。(続く)

 

続きは現在発売中の2020年1月号誌面でどうぞ。

 

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