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ヒ素を食べるシダ〜日経サイエンス2019年11月号より

この植物の遺伝子を利用すればヒ素を含む土壌や水を浄化できるかも

 

世界で数百万人がヒ素に汚染された地下水や土壌に苦しめられている。この物質が飲み水や作物に入り込むと,皮膚病変やがんなどの病気を引き起こす場合がある。だがモエジマシダ(Pteris vittata)は,他のほとんどの生物が死んでしまう濃度のヒ素を自然に蓄積し,なぜか育ち続ける。この耐性の背景にあるメカニズムは生化学の長年の謎だ。

 

最近,パデュー大学の生物学者バンクス(Jody Banks)とカイ(Chao Cai)らは,そのメカニズムを明らかにした。このシダの遺伝子を他の植物に組み込めば,その能力を引き出してヒ素汚染地域を浄化するのに利用できるようになるかもしれないとバンクスはいう。

 

Pteris vittata moejimasd01ヒ酸塩を捕捉,小胞で亜ヒ酸塩に

このシダがヒ素に接触すると3つの遺伝子が活性化することにバンクスは気づいた。彼女はこれらの遺伝子がヒ素耐性を生じているのかどうか確かめるため,いくつかの標本でそれぞれの遺伝子をオフにするという生物学でよく使われる技法を用いた。それらのシダはヒ素にさらすと死んだ。次に彼女のチームは顕微鏡を使って,これらの遺伝子がコードしているタンパク質をシダのなかで追跡し,それらが一緒に働いてヒ素を収集し,シダの葉のなかを移動しながらヒ素を中和していることを突き止めた。

 

そのタンパク質のひとつGAPC1は多くの生物に見られ,リン酸塩を使って糖を分解しエネルギーを生み出している。土壌に見つかるヒ素はヒ酸塩の形を取っており,この反応過程のリン酸塩に取って代わってエネルギー生産を妨げるため,毒性を生じる。だがこのシダではGAPC1の構造がわずかに異なっていて,ヒ酸塩と化学結合できる。3つの遺伝子のうち別の1つがコードしているOCT4というタンパク質は,捕捉したヒ酸塩を,細胞内にある小胞という小さな袋状の構造に膜を通して運び込む。3つめの遺伝子がコードするタンパク質GSTが小胞の内部でヒ酸塩を亜ヒ酸塩に変える。小胞はこの化合物を植物の一部分に輸送し,亜ヒ酸塩はそこに安全に蓄積されて,昆虫による食害を防いでいる。この研究は5月のCurrent Biology誌に報告された。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年11月号誌面でどうぞ。

 

 

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