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足跡プールが育む小動物〜日経サイエンス2019年11月号より

カエルはゾウの足跡のなかで次世代へ命をつないでいる

 

爬虫両生類学者のプラット(Steven Platt)は,2016年の乾期にミャンマー(旧ビルマ)で行った調査で雨期には冠水していたネヤイン湿地を踏査していて,奇妙なものに目が止まった。フリスビーほどの大きさの水たまりが,カエルの卵の塊と泳ぎ回るオタマジャクシであふれていた。

 

この水たまりはゾウの古い足跡だった。野生生物保護協会(WCS)に勤務しているプラットは,これらの水たまりが,この干上がった土地で次世代のカエルにとっての生命線になっている可能性に気づいた。「これらの足跡,実にちっぽけな池が,そこにいるもっと小さな生物すべてにとってどれほど重要なのか,疑問がわいた」という。

 

ゾウは生態系のエンジニアだといわれる。木をなぎ倒し,低木を踏みつけ,枝を刈り,種子をまき散らすことで,生物多様性を高め,サバンナと森林の維持に寄与している。

 

多くの研究者がこうした大スケールの効果に注目しているが,プラットは別の重要な効果がゾウの足下に転がっているのではないかと考えた。彼は2017年にこの地を再訪し,同じ場所に足跡を見つけた。カエルの卵もオタマジャクシも前年と同様だった。カエルサイズのお風呂が並んでいるようなもので,これらの足跡は乾期に小さな繁殖場所となって,本来は大きく広がっている湿地の各所を結んでいるようだと,プラットらは5月のMammalia誌に報告した。

 

大小の生物の意外なつながり

こうした生命の小宇宙はおそらくありふれたものなのだろうが,「わざわざ観察しようとした人はほぼ皆無だった」とプラットはいう。2017年にAfrican Journal of Ecology誌に発表されたある論文は,ゾウ足跡の水たまり内部の生物多様性を調べた唯一の別の研究だと思われるが,プラットの直感を裏づけている。この論文の著者たちはウガンダで,ゾウの足跡と人工的に作られた水たまりのなかに,数十種の無脊椎動物とオタマジャクシを見つけていた。

 

ケニアの非営利団体セーブ・ジ・エレファントでゾウ危機基金を率いているサウレス(Chris Thouless,今回の研究には加わっていない)は,ミャンマーでのこの発見は「自然界において最大級の生物と最小級の生物が相互につながっていることを驚くべき形で示している」という。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年11月号誌面でどうぞ。

 

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