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新たな脳画像法fMRE〜日経サイエンス2019年10月号より

fMRIよりもケタ違いに高速

 

30年近く前,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)の発明は行動に応じた脳活動を可視化し,神経科学に革命をもたらした。この技術は空間的には正確だが,速度が大きく限られている。fMRIは血中酸素濃度の変化を測っており,これには約6秒かかる。脳信号そのものに比べるとまったく遅い。脳波計などの他の方法は高速だが不明確で,脳の深部の信号は検出できない。

 

脳組織の硬さを検出

ハーバード大学医学部の物理学者パッツ(Samuel Patz)と英ロンドン大学キングス・カレッジの物理学者シンクス(Ralph Sinkus)らは最近,fMRIの速度の欠点を克服するために既存の組織画像技術を改変し,マウスの脳で試した。「機能的MRエラストグラフィー(fMRE)」として知られるこの方法は,組織を通して振動を送り,磁気共鳴を用いてその振動が伝播する速度を測る。振動は硬い物質のなかほど速く伝わるため,組織の硬さを地図化した“エラストグラム”が得られ,これが脳活動に対応している可能性がある。脳活動の測定にfMREを利用した試みはこれが初めてだという。

 

パッツとシンクスらは4月にScience Advances誌に報告した研究のなかで,マウスの後肢に弱い電気ショックを加えて脳内に信号を誘発し,様々な速度で電気刺激のオンオフを切り替えた。刺激を加えたときと加えていないときに撮像したfMREスキャンを比較することで,刺激の結果としてどの領域の硬さが変化したかを示す画像を作り出した。ある種の脳細胞は関連するニューロンが発火すると軟らかくなると彼らは考えており,つまり硬さの変化は神経活動に対応しているとみている。彼らは刺激のオンオフ切り替え速度を変えることで,fMREが少なくとも100ミリ秒ごとに脳信号を検出できることを実証した。

 

神経回路の解析に期待

チームは現在,人間でこの手法を試している。「うまく機能することを示す有効なデータを得た」とパッツはいう。すべてが順調に進めば,この技法は脳画像分野の重要な進展となるだろう。「脳回路を情報がどのように流れているかを解明する“実効的結合”解析を実施するうえで,ずっとよいポジションが得られるだろう」と英ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの神経科学者ロイザー(Jonathan Roiser)は評する。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年10月号誌面でどうぞ。

 

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