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自家発電ペースメーカー〜日経サイエンス2019年9月号より

心拍を利用して電池を不要に

 

心拍によって発電して動くペースメーカーを,心臓の大きさと機能が人間と似ている生きたブタで試す実験が成功した。電池のいらない埋め込み型医療機器の開発に向けた重要な前進だという。現在のペースメーカーは電池の寿命が7~10年で,交換するには高額な手術が必要とされている。

 

From “Symbiotic Cardiac Pacemaker,”
by Han Ouyang et al., in Nature Communications,
vol. 10, Article No. 1821; 2019

今回の新しい“共生ペースメーカー”は3つの部分からなる。1つはウエハースほどの大きさの発電機で,手術で心臓の表面に装着され,拍動の力学エネルギーを電気エネルギーに変換する。2つ目はそのエネルギーを蓄積するコンデンサーを備えた電力管理ユニット,3つ目は心筋を刺激して調節するペースメーカー本体だ。

 

北京ナノエネルギー・ナノシステム研究所のリ(Zhou Li)とジョージア工科大学のワン(Zhong Lin Wang)らは,このデバイスをオスの成体ブタ2頭に埋め込んだ。1頭目は健康な心臓を持つブタで,発電機がどれだけうまくエネルギーを拾って発電できるかを試した。得られた電力でペースメーカーを3時間半ほど駆動できた。研究チームは4月のNature Communications誌に,このブタの心臓は人間用のペースメーカーを動かすのに必要とされるよりもずっと多くのエネルギーを生み出したと報告している。

 

2頭目のブタでは,不整脈(不規則な心拍)を誘発してペースメーカーの治療機能をテストした。ブタの心臓の動きによって1時間以上充電してから装置のスイッチを入れたところ,心拍はすぐに正常に戻り,スイッチを切ってもその状態が続いた。

 

より柔軟なシステムへ

装置のサイズと安全性,効率を人間に合わせて最適に調整する必要があるため,ヒトでの試験はまだ先になるだろう。この研究には加わっていないデューク大学の医用生体工学者ウルフ(Patrick Wolf)は「報告された技術はかなりの成果だ」という。だがサイズと効率の問題は大きく,動きの弱い病んだ心臓でこのペースメーカーがうまく働くかどうかまだ明確でないと警告する。

 

もうひとつの欠点は,この装置は心臓の表面に直接装着する必要があり,心臓の機能を阻害する心配がある点だ。ダートマス大学とテキサス大学サンアントニオ校のグループは以前,心拍によって動かされた付属のリード線から運動エネルギーを取り出すペースメーカーを設計した。同グループは現在,イヌで試験を行っている。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年9月号誌面でどうぞ。

 

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