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ヤスデの光る生殖肢〜日経サイエンス2019年9月号より

紫外光の下で蛍光を発する

 

ヤスデは区別が難しい。これらの多足類はどの種も同様にくすんだ色で,薄暗い森の地面の色にとけ込んでいることが多い。しかし,一部のヤスデは紫外光を当てると非常に目立つ特徴を表す。生殖器が明るく光るのだ。

 

シカゴのフィールド博物館の研究助手ウェア(Stephanie Ware)らは,この奇妙な蛍光をヤスデの同定に利用した。安価な紫外線ランプをカメラにつけて,ヤスデの「生殖肢」が光るのを撮影した。生殖肢は交尾に使われる特殊化した付属肢だ。ウェアは撮影した多数の写真をつなぎ合わせて1つの合成画像を作成した。可視光で撮影した写真で「ヤスデの構造を識別するのは非常に難しいが,紫外光の下では様々なパターンと色がはっきりと浮かび上がった」という。

 

オビヤスデの種を正しく同定

この技法を使うと見た目の似た種を容易に区別できると,フィールド博物館の動物学者シアワルド(Petra Sierwald)はいう。シアワルドとウェアらはこの件に関する論文を共著し,4月のZoological Journal of the Linnean Society誌電子版に発表した。この紫外線技術を用いて,これまで誤って12種に分類されていた北米のオビヤスデ属(Pseudopolydesmus)の種を8種と同定した。こうした画像法を土壌科学や生物保護に応用すれば,場所ごとに特定の種のヤスデがいるかどうかをすぐに調べられるとシアワルドはいう。「ヤスデは落ち葉を分解してリサイクルしてくれるので,土壌の健全性を示す非常によい指標だ」と指摘する。

 

しかし,ヤスデの生殖器がなぜ蛍光を発するのかは不明だ。「オビヤスデ目(Polydesmida)のヤスデには目がないので,見ることすらできない」とシアワルドはいう。生殖肢が蛍光を発していても,これらのヤスデ自身にはそれが見えないということだ。

 

アルゼンチンのブエノスアイレス大学で光生物学を研究している化学者ラゴリオ(M. Gabriela Lagorio,今回の研究には加わっていない)は,この特徴に進化上の目的があるかどうかはわからないという。「組織中に存在している物質の化学構造がたまたま蛍光を発するようになっているだけで,機能的な意味はないのかもしれない」と指摘する。■

 

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