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かに星雲から最強ガンマ線〜日経サイエンス2019年9月号より

中国チベット自治区での日中共同プロジェクトで観測

 


宇宙線が大気中でつくる空気シャワー
IMEGE:チベットASγ実験グループ

東京大学宇宙線研究所などの日中共同グループは観測史上,最もエネルギーの高いガンマ線が,天の川銀河内の「かに星雲」から到来していることを突き止めた。研究グループが中国内陸に設置していた宇宙線・ガンマ線観測装置を大幅改造して得た成果だ。地球に常時降り注いでいる高エネルギー荷電粒子,「宇宙線」の起源を解明する新たな手がかりになる。

 

かに星雲は太陽系から約7000光年の距離にある。藤原定家の『明月記』に記されている1054年の超新星爆発の残骸だ。そこでは陽子や電子など各種荷電粒子が光速近くまで加速され,宇宙線の有力な発生源の1つだと考えられている。今回の超高エネルギーガンマ線は,かに星雲周辺で生じた超高速の電子が,宇宙マイクロ波背景放射由来の光子に衝突して生み出されたと推定されている。超高エネルギーガンマ線を調べることで,荷電粒子の加速メカニズムに迫ることができる。

 

今回,ガンマ線を観測したのは中国チベット自治区の標高約4300mの高地にある空気シャワー観測装置。空気シャワーは宇宙から到来した宇宙線とガンマ線が大気に突入,大気中の原子核と反応して大量の荷電粒子(2次粒子)が生じ,地表に向けて降り注ぐ現象だ。観測装置は6万5000m2の範囲に展開された約600台の2次粒子検出器からなり,それらの観測データを解析することで宇宙線やガンマ線の到来方向とエネルギーを推定する。

 

この装置は1990年から稼働しているが,宇宙線とガンマ線の区別ができないのが難点だった。そこで2014年に別タイプの装置を地下2.4mに新設,問題を解決した。新装置は水深1.5m,総面積3400m2の水プールで,2次粒子のうちミュー粒子で生じる水中の発光現象を高感度の光センサーで捉える。宇宙線とガンマ線による空気シャワーを比べると,2次粒子に含まれるミュー粒子の数はガンマ線の方がはるかに少ないので,新装置の観測データから両者を区別できる。

 

新装置の稼働から約2年分の観測データをこのほど解析したところ,かに星雲の方向からエネルギー100TeV(1TeVは1兆電子ボルト)超のガンマ線が約20回到来しており,なかには450TeVに達するガンマ線もあった。(続く)

 

続きは現在発売中の2019年9月号誌面でどうぞ。

 

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