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シカとコウモリの共生関係〜日経サイエンス2019年8月号より

サシバエ防除でどちらもハッピー

 

防虫剤を忘れたらどうする? ミネソタ州の一部のシカは,伝染病をもたらすサシバエの大群をコウモリに食べてもらう。これまで知られていなかったこの共生関係は,オジロジカと未同定種のコウモリの間に見られるもので,同州にあるシーダークリーク生態系科学保護区においてカメラトラップの映像と目視の両方で観察された。

 


wikipedia

「これらのコウモリは,シカの周りにいるすべてのハエに引き寄せられているようだ」と,当時ミネソタ大学のポスドク研究員としてこの研究を率いたパーマー(Meredith Palmer)はいう。草食哺乳類と鳥類の共生関係はよく知られているが,「こんなふうに哺乳動物どうしが関わり合うのはとてもまれだ」という。

 

アブ(ウマバエ)やメクラアブ(シカバエ)に刺されると痛く,化膿や伝染病の原因にもなるので,このコウモリは夏の間,シカに大きな安寧をもたらしている。一方のシカは虫をおびき寄せる疑似餌となって,コウモリに“ハエ食べ放題ビュッフェ”を提供している。コウモリは「エサを探す時間を節約できる」とパーマーはいう。「ハエを探して森中を飛び回るには及ばない」。3月のEthology誌に報告。

 

この研究には加わっていないウィニペグ大学(カナダ・マニトバ州)の生物学教授ウィリス(Craig Willis)は,この発見はコウモリが人間を害虫から守ってくれる可能性を示唆しているという。「コウモリがシカを刺す昆虫を減らしているのなら,人間に対しても同じことができるだろう」という。

 

生態学の研究は捕食者と被食者の相互関係に焦点を当てたものが多く,動物が互いに助け合う前向きな関係はあまり注目されていないと,パーマーは指摘する。こと相互に有益な共生関係に関しては「大きな空白がある」という。■

 

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